「シリーズダイバーシティ経営」刊行記念シンポジウム ニューノーマル時代のダイバーシティ経営 〜コロナ禍で変化した働き方の現状と今後の課題〜

ダイバーシティ経営を進める上で自社の課題を整理し、解決策を導くためのヒントが得られる書籍シリーズ、「シリーズダイバーシティ経営」全6巻(中央経済社)の刊行が2020年8月よりスタートしている。日本のダイバーシティ領域の権威、中央大学大学院戦略経営研究科教授の佐藤博樹氏をはじめとする研究者が企業と連携して共同研究を行っているWLB(ワークライフバランス)&多様性推進・研究プロジェクトでの成果をまとめたのが、この書籍シリーズだ。HR総研では6名の著者の方々を迎え、10月30日(金)、「シリーズダイバーシティ経営」刊行記念シンポジウムをオンラインにて開催。WLB&多様性推進研究プロジェクトと「シリーズダイバーシティ経営」全6巻の内容が紹介された前半に続き、後半では「ニューノーマル時代のダイバーシティ経営の課題は?」と題してディスカッションが行われた。

【ゲスト】
佐藤 博樹氏(中央大学大学院 戦略経営研究科 教授)
武石 恵美子氏(法政大学 キャリアデザイン学部 教授)
坂爪 洋美氏(法政大学 キャリアデザイン学部 教授)
松浦 民恵氏(法政大学 キャリアデザイン学部 教授)
池田 心豪氏(労働政策研究・研修機構 働き方と雇用環境部門 主任研究員)
矢島 洋子氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 執行役員 主席研究員)

【司会】
寺澤 康介(ProFuture株式会社 代表取締役社長/HR総研 所長)

企業と連携する共同研究プロジェクトの成果から書籍を刊行

寺澤 「シリーズダイバーシティ経営」は、日本のダイバーシティ領域の権威でいらっしゃる中央大学大学院戦略経営研究科教授の佐藤博樹先生と、法政大学キャリアデザイン学部教授の武石恵美子先生の責任編集により、今年8月から来年5月頃にかけて刊行される全6巻の書籍シリーズです。今、コロナ状況下で多様な働き方、多様なワーク&ライフが一気に広がり、今後も進んでいこうとしている中で、まさに時宜を得た刊行となったと思います。では、まず最初に、この書籍シリーズを送り出したWLB(ワークライフバランス)&多様性推進・研究プロジェクトについて、プロジェクト発足に携わられた佐藤先生からお話を伺いたいと思います。

 

佐藤 WLB&多様性推進・研究プロジェクトは、我々研究者と民間企業の共同研究という形で活動しているプロジェクトで、立ち上げたのは2008年10月です。当時は、女性が働くか結婚して子供を持つかという二者択一を迫られないような社会にしないと少子化問題は解決しないし、男女共同参画の観点からもワークライフバランスを実現できるような働き方に変え、多様な人材が働けるようにしなければならないという議論が行われていた時期でした。2007年12月には、仕事と生活の調和ができるような社会や働き方を実現することを目的とした「ワークライフバランス憲章」とも呼ばれる「仕事と生活の調和憲章」に関して、政府、経営者団体、労働組合が合意しました。

ただ、当時、海外では、大学にワークライフバランスに関する研究拠点があり、調査研究に基づいて政府や民間企業への提言を行っていましたが、日本にはそういうものがありませんでした。そこで、以前から武石さんとも話をしていたのですが、政府の審議会や研究会でワークライフバランスの重要性を検討する中で、日本にも企業の実態に即してワークライフバランスの在り方について調査研究と提言を行う研究組織が必要ではないかと考え、2008年10月、最初は6社の企業にご参加いただいて、このプロジェクトを立ち上げたわけです。発足から12年が経ち、参加企業・団体が30にまで増え,11月には活動が13年目に入ります。これまでも調査研究・活動成果に基づいて、企業向けにさまざまな提言を行うとともに、研究成果の社会的な発信として書籍刊行も行ってきました。今回のシリーズはその総仕上げの一つということになります。

 

寺澤 続いて、今回刊行となった書籍シリーズの目的と内容について、武石先生、ご紹介いただけますか。

 

武石  WLB&多様性推進・研究プロジェクトでは、発足以来、3年を1つの期として研究活動を行い、期ごとに書籍を刊行してきました。今回、第4期(2017年4月から2020年3月まで)の研究成果の集大成として、「シリーズダイバーシティ経営」全6巻(中央経済社)の刊行を開始しており、3冊がすでに刊行されています。昨今、人材の多様性を活かすダイバーシティ経営が本格化していますが、なかなかそれがうまくいっていない状況が日本では続いています。そこで、6つの視点からダイバーシティ経営の現状と課題を整理し、どのようなことが必要なのか、経営目線で提言していこうということが、この書籍シリーズ刊行の目的です。読者はダイバーシティ経営に人事あるいはマネジメントとして関わる実務家、研究者、また、このテーマに関心をお持ちの学生を含む一般の方々を想定しており、このテーマについて理解し、議論や研究を行う際のテキストとして活用していただけるものになっています。

この書籍シリーズは、プロジェクトで実施してきた研究活動をベースに、日本企業のダイバーシティ経営を意識した内容となっており、実務家と協働するプロジェクトの特徴を活かし、理論的な部分だけではなく、実務の現場を踏まえて現状・課題分析を行っています。また、ダイバーシティ経営の主要な論点について網羅していることも特徴的です。ダイバーシティ経営ということでまとまった書籍シリーズは、これまであまりなかったのではないかと思います。全6巻の構成は次の通りです。

 

『多様な人材のマネジメント』(刊行予定)佐藤博樹・武石恵美子・坂爪洋美[著]

『働き方改革の基本』佐藤博樹・松浦民恵・高見具広[著]

『管理職の役割』坂爪洋美・高村静[著]

『女性のキャリア支援』武石恵美子・高崎美佐[著]

『仕事と子育ての両立』(刊行予定)矢島洋子[著]

『仕事と介護の両立』(刊行予定)池田心豪[著]

原点に立ち戻り、必要な改革の方策を示す『働き方改革の基本』

寺澤 では、各巻の内容について、著者の皆さんからご説明いただきます。

 

佐藤 『多様な人材のマネジメント』は、「シリーズダイバーシティ経営」の総論として各巻の位置付けを明確にする内容となり、ダイバーシティ経営の定義や内容について説明します。また、ダイバーシティ経営を支える柱ですが、各巻で取り上げることができなかったテーマとして、雇用処遇制度や社員の自律的なキャリア形成を扱います。さらに、ダイバーシティ経営を実現すると、経営全体としてどういう成果につながるのか、また、ダイバーシティ経営の土台となる働き方と管理職の職場マネジメントをどう改革していけばよいのかというテーマを取り上げます。さらに視点を海外に広げ、欧州企業のダイバーシティ経営の現状について取上げる章も設けます。まず、この巻で総論としてダイバーシティ経営を理解し、さらに詳しく学ぶために、ほかの各巻を読んでいただくということができると考えています。

 

松浦 『働き方改革の基本』は、単に長時間労働を解消するだけではなく、社員一人ひとりが高い時間意識を持って働けるようにしていくという「働き方改革の基本」に立ち戻ることを意図した内容になっています。働き方改革の目的を改めて考え、ダイバーシティ経営の土台となり得る働き方改革に向けて論点を整理し、職場マネジメント改革の具体的な方策を示したいという思いを、本書のタイトルに込めました。具体的には、労働時間の現状や課題に始まり、人材育成や評価を含む人事制度・運用の問題、働き方改革の担い手としての管理職の問題について論じたほか、勤務場所の柔軟化を取り上げた章では、コロナ禍のもとでリモートワークの急拡大に直面する企業や管理職にとって、直接的な示唆となる内容を盛り込んでいます。また、時間意識の高い働き方に転換を図る上で避けて通れない生活改革にも焦点を当て、働き方改革と生活改革の好循環に向けて人事や社員ができることについても考察しています。

 

坂爪 『管理職の役割』は、ダイバーシティ経営の推進において管理職がどのような役割を果たし、どのような課題に直面するのかを整理した上で、管理職が期待される役割を果たすために何ができるのかを検討する内容となっています。本書では、まず、ダイバーシティ経営において管理職が重要となる理由として、①管理職が部下と直接接点を持つこと、②ダイバーシティ経営に関わる人事施策を運用すること、③リーダーシップを発揮すること、④職場の風土を作ることを示しました。その上で、多様な部下のマネジメントに苦戦する管理職の背後にある問題を整理する枠組みとして、「ダイバーシティ経営固有の難しさ」、「管理職の役割全般から見た難しさ」、「人事施策全般の運用における難しさ」、「期待されるリーダーシップ」といった、複数の視点を提示しました。管理職が体現するダイバーシティ経営の難しさを分解し、解決策を考える軸を提示することを目指したのが本書です。

女性一般職を重要なテーマとして論じた『女性のキャリア支援』

武石 ダイバーシティ経営の中でも、ジェンダーダイバーシティは日本企業において優先度が高く、国際的に見ても遅れている分野です。『女性のキャリア支援』では、ダイバーシティ経営において女性のキャリア支援がどのように位置付けられており、何が課題で、何が必要なのか、女性の中の多様性にも注目しながら議論を展開しています。議論の視点としては、女性の能力発揮が進まない要因について、これは女性側の問題ではなく、組織側に問題があるというところに課題を設定し、そこからキャリア支援の在り方を考えました。具体的には、女性の就職、初期キャリア、出産・育児期、管理職昇進というキャリアの流れの中で現状を分析し、雇用管理のステージを通じた女性のキャリア支援が行われることの重要性を指摘しています。従来の女性のキャリア研究であまり取り上げられなかった、しかし、圧倒的大多数である「(管理職に就かない)女性一般職」を重要なテーマとして論じている点も、本書の大きな特徴です。

 

矢島 『仕事と子育ての両立』では、1990年以降の法整備など国の施策や、家庭内の役割分担、地域における子育て支援の変化を踏まえて、企業の「仕事と子育ての両立支援」の今日的課題を整理します。主なテーマとして、正社員を対象とした「男性の子育て」「子育て女性の能力発揮とキャリア」を取り上げるとともに、子育て社員のサポートを期待されてきた「同僚」にも焦点を当てています。子育て社員だけでなく、全社員を対象に働き方改革を行い、全社員のワークライフバランスや多様な働き方を実現することが求められる中で、子育て社員の仕事との両立の在り方がどう変わってくるかについても論じています。同質的な人材や働き方を前提とした従来の日本的経営では、「子育て社員」は特別な支援を必要とする人材と見られがちでした。本書では、ダイバーシティ経営の観点から柔軟な働き方や多様なキャリア形成を可能とする取り組みにより、働き方の制約の負の影響が減る一方で「子育てという経験」が前向きに評価される可能性が広がり、企業が積極的に採用し、定着、活躍を期待する人材となるのではないかという視点で議論を展開します。

 

池田 『仕事と介護の両立』では、介護離職が社会問題化し、経営課題として認識されるようになってきた中、実際にどのような支援の取り組みが求められるのかを考えるための課題を整理します。介護の問題を考える際のポイントとして、本書で強調しているのは「介護は育児とは違う」ということです。例えば、育児において問題となる生活時間の配分は介護では必ずしも大きな問題にならないため、多くの介護者は両立支援制度を使わず、まずは通常の勤務で仕事と介護の両立を図っていますが、介護疲労の蓄積によって心身の健康問題が起き、仕事のパフォーマンスが落ちるという問題も起きています。多様で、かつ企業から見えにくい介護に対しては、問題が顕在化する前からコミュニケーションをしっかり取り、適切な対応を行っていくことが重要です。このように、育児と介護には共通する部分もありつつ、似て非なる部分がかなりあり、そこが取り組みを難しくしている面があるため、本書はこの点に注意して取り組むよう喚起する内容となっています。

コロナ状況下で変化し、揺り戻しも起きている働き方の現状

寺澤 ここからは、「ニューノーマル時代のダイバーシティ経営の課題は?」というテーマで議論したいと思います。まず、今回のコロナ状況が働き方にどのような変化をもたらしているのか、調査機関に在籍されている矢島さん、池田さんからお話しいただけますか。

 

矢島 私ども、三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、全国一斉に緊急事態宣言が出ていた5月5日、6日に全国1万人を対象に実態調査を行い、人々の行動や意識にどのような変化があったのかを見ています。その結果から、今後のダイバーシティ社会・経営を後押しするプラスの要因とマイナスの要因、それぞれがあったとみられます。プラスの要因としては、これまで子育て中など一部の社員にしか使われていなかった企業でも、テレワークなどの柔軟な働き方がかなり広がりました。今後もこれを継続するという企業が出ている中、一部ではなく全社員が使うということで、本格的に柔軟な働き方を進めるために人事制度を全面的に改定する必要性も議論の俎上に乗ってきました。また、男性の働き方が変わったことから、家庭内の役割分担で男性のシェアが増えています。これらはダイバーシティ経営やジェンダーダイバーシティという観点からは非常にプラスです。ただ、その一方、マイナスの要因として、女性に多い非正規社員の多くが失職したり収入減になっていたり、いまだ家事・育児・介護を多く担っている女性にコロナ対策の負荷が多くかかっているといった実態があります。

 

池田 私が在籍している労働政策研究・研修機構でも、同じ人を長期的に追跡していく形の調査を今年の5月と8月に行っており、次は12月を予定しています。その結果からテレワークや労働時間の問題を分析すると、緊急事態宣言の解除後、子供を持つ女性は労働時間の回復が遅い一方、子供を持つ男性は回復が早い傾向が見られます。なぜ、女性より男性の方が普段通りの働き方に早く戻れるのか、女性の活躍を考えると、先ほど武石先生がおっしゃったように、これを本人の問題ではなく会社の問題として捉えていく必要があるということだと思います。また、テレワークの利用状況については、コロナ禍を受けて2020年の4月以降に制度を導入した企業は見事に元に戻っている一方、その前から制度を導入していた企業では、元に戻ってきてはいるものの、戻りきっていないという傾向です。ただ、考えてみれば、通信環境などの整備が十分できていないままでテレワークをしても、やはり追いつかない部分がありますから、コロナ後に新たに制度を導入した企業は、一度仕切り直すのもやむを得ない面があるだろうと思います。

 

寺澤 コロナ状況下で、働き方には良い影響、悪い影響の両方が出ているということですが、確かに、良い影響が続いている企業と、元に戻ってしまっている企業があり、同じ業界の中でもばらつきが非常に大きいと感じます。佐藤先生は、全体的に現状をどうご覧になっていますか。

佐藤 やはり、経営トップがどう考えるかということが非常に大事ですね。コロナが収束して全員が職場で働ける状況に戻っても、リモートワークなら、子育て中の女性も出張せずに各地の人と連携してプロジェクトを進めたり、あるいは、在宅なら6時間勤務ではなく8時間働けるといったことがあります。女性を含めた多様な人材が活躍できるためには、これまでの働き方を変えないといけないということを経営トップが理解していれば、今後も元に戻らず、先を見た働き方の実現ができますが,そうしないと元に戻ってしまう企業も出てくるでしょう。

個人の多様性に対応する人事管理にいかに変えていくのか

寺澤 確かにトップの考え方は重要ですね。また、リモートワークといった柔軟な働き方に変わってくると、負担がかかるのは管理職だと思います。職場におけるマネジメントの課題について、坂爪先生からお話しいただけますか。

 

坂爪 管理職は、コロナ禍で社会全体の不安が高い中で、今まで目の前にいた部下の姿が見えない不安な状況へと急激に変わり、2つの不安が重なりました。不安というのは、わずかなきっかけで「部下は家にいると仕事をしないんじゃないか」など、相手への不信感を生みます。その悪循環をどう断ち切るかが、まずは管理職にとって大きな課題だと思います。また、社員に自律的なキャリア形成が求められるようになってきた昨今は、皆がいろいろな方向に向き、職場がばらばらになっていきかねません。それに加えて、コロナ状況下で在宅勤務が広がり、ますますマネジメントが難しくなった中で、管理職は不安と戦いながら職場をチームとしてまとめていかなければならないわけです。中でも、新入社員など、新しく入った人をどうチームの一員にするかということは非常に難しいでしょう。多様でそれぞれ違う人たちへの個別対応と、チームをまとめていくという両方をやっていくことが、ニューノーマル時代のダイバーシティ経営における管理職には強く求められていると思います。

 

寺澤 ニューノーマル時代の多様性のマネジメントをどのようにやっていくのかについては、そういう仕組みをいかに人事が提供するのかが問われると思います。人事管理の仕組みをうまく変えていくにはどうすればよいのか、武石先生のお考えはいかがですか。

 

武石 まず、人事管理の前提となる人材像が変わっているということがポイントです。従来の同質管理では、従業員は皆同じような意識で、給料やポストをあげれば頑張るものだ、そこで頑張れない人は少し周辺的なところでも仕方ないというようなところがありましたが、ダイバーシティ経営、特にコロナ禍の中で、一人ひとりが違うということが顕在化しました。では、皆同じではない中でどういう人を会社が評価するかというと、これからは何でも我慢して会社の言う通りに頑張る人ではなく、自分の頭で物事を考えて今の経営の難局を打開していく人が必要になり、そういう人を評価しなくてはいけません。次に大事なのは、そういう人をどう育成し、どうインセンティブを与えるかということです。最近増えている社内公募など自己選択型のキャリア制度や、単純な成果評価ではなく、失敗してもチャレンジしたことを評価するような制度は、この目的に合致したインセンティブの仕組みです。さらに、こうした人事制度を現場で動かす管理職の任用や育成、支援が非常に重要になっていると思います。

ダイバーシティ経営を進めるために「理念共有」は不可欠

寺澤 かつての同質性を重視した集団的な人事管理から、個人に寄り添い、個人の多様性に対応する人事管理に変えることが求められているわけですね。個人に焦点を当てたときに、個人のキャリア形成面ではどういう課題があるのか、松浦先生からお話しいただけますか。

 

松浦 リモートワークの生産性は、時間意識の高い働き方ができるかどうかによって相当変わります。特に、コロナ禍のもとで急激にリモートワークが進展したことで、いろいろな境界管理の問題が生じていることに留意する必要があります。まず『時間的境界』です。「ずっと家にいるのだからいいでしょう」と、夕方遅い時間にオンライン会議を強いられる場合などです。また、『空間的境界』としては、会議の途中で家族が部屋に入ってきたり、会議中、家族が静かにしているよう我慢させられるような問題があります。加えて、『関係的境界』です。雑談する機会がないからと上司にオンライン飲み会に誘われ、居酒屋なら2時間で終わるのに延々と終わらないというような問題です。このような問題に対し、個人としても、どういう境界管理をした方がより生産性が上がるかを考え、発信していく必要があります。また、むしろリモートの方が生産性が上がるもの、やはり対面の方が生産性が高いものを分け、戻すもの、戻さないものを考えて取捨選択していくことも大事だと思います。

 

寺澤 皆さんにいろいろな観点から議論いただきましたが、最後のまとめを佐藤先生にお願いしたいと思います。

 

佐藤 属性が多様なだけでなく、価値観や考え方が多様な人を受け入れて活躍することができる企業組織を目指すのがダイバーシティ経営です。属性や価値観だけでなく,社員が希望するキャリアも多様化し,働く場所も1カ所にまとまるのではなく分散します。つまり、ダイバーシティ経営を進めると遠心力が働くわけです。しかし、企業は組織であり、まとまりが必要です。そこをどうグリップして組織の求心力を高めるかというと、一つは職場の管理職のマネジメント力であり,もう一つ、私がいつも言っているのは、ダイバーシティ経営を進めれば進めるほど、理念共有経営が必要だということです。一人ひとりの価値観は違っても、自社が何を目指すのかという理念を共有することで、分裂せずに同じ方向に向かうことができます。従来の日本企業は、同質的な考え方の人が同じ場所でずっと働いているので、わが社が何を目指している企業なのかが自然にわかりました。しかし、これからは社員の理念共有に力を注ぐことがきわめて重要だということを、最後に申し上げたいと思います。

 

寺澤 本日はありがとうございました。

 

『多様な人材のマネジメント』(刊行予定)佐藤博樹・武石恵美子・坂爪洋美[著]

『働き方改革の基本』佐藤博樹・松浦民恵・高見具広[著]

『管理職の役割』坂爪洋美・高村静[著]

『女性のキャリア支援』武石恵美子・高崎美佐[著]

『仕事と子育ての両立』(刊行予定)矢島洋子[著]

『仕事と介護の両立』(刊行予定)池田心豪[著]

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