第12回:仕事ができない人材の活用のレガシーの壁をぶっ壊す!

令和になった今でも「人事のレガシー」という亡霊に取りつかれたまま、思考停止している日本企業の人事によくお会いします。第12回目は「仕事ができない人材の活用」に焦点を当てます。

◆人事のレガシー12 「仕事ができない人でもその人に能力に見合った仕事なら成果を出せ」
◆レガシーを破る視点 「仕事のできない人は自尊心が高い上にガラスハートという前提で、3つのタイプに合わせたアプローチを行う」

松本 利明

HRストラテジー 代表

外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長級)を経て現職。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。5万人以上のリストラと6500人を超える次世代リーダーの選抜や育成を行った「人の目利き」。人の持ち味に沿った採用・配置を行うことで人材の育成のスピードと確度を2倍以上にするタレント・マネジメントのノウハウが定評。最近は企業向けのコンサルティングに加え、「誰もが、自分らしく、活躍できる世の中」に近づけるため、自分の持ち味を活かしたキャリアの組み立て方を学生、ワーママ、若手からベテランのビジネスパーソンに教え、個別のアドバイスを5000名以上、ライフワークとして提供し、好評を得ている。HR総研 客員研究員。

仕事ができない人の本音を正しく掴む

どんな人材でも能力に見合った仕事であればきっちりできるはず、と思うのが普通でしょう。ここに罠があります。人は感情の動物なので、理屈よりも感情が仕事の成果と生産性に影響します。同じ仕事でも嫌々やるのと楽しんでやるのでは、成果もストレスも全く違うものになります。

感情面で言うと、実は仕事ができない人こそプライドが高いのです。プライドが高いけど、本当は自信がないガラスのハートなのです。ガラスのハートだから報告や相談ができず、自分のミスも認められないのです。自分は悪くない、指示が悪いなど他責にしてしまいます。

なので、簡単な仕事を任せても結局抱え込むなど、同じミスを繰り返します。周りからも「簡単な仕事にしてあげたのに」という目線や態度を敏感に感じ取り、余計意固地にさせてしまうのです。プライドも余計傷つきます。その結果、パフォーマンスが落ち、周りの負荷も増え、チームの生産性が落ちてしまうのです。

ローパフォーマーのタイプは3つに整理できる

仕事のできない人は必ずいるもので避けられない存在ですが、この仕事のできない人のタイプは実は3タイプしかありません。

①自分の作業スピード、段取りが悪く、いつも遅れる。(そもそも仕事が遅い。常にクライマックス)

②仕事の目的とゴールを確認せず、質問せず、抱え込む(抱え込んで自爆する)

③細かい確認に興味がなく、間違えたまま仕事を進める(まちがえても気にしない)

この、タイプ別の対象法を仕事の依頼や指示を出す方に教えてあげれば仕事ができない人も劇的に変わるのです。

寄り沿うよりタイプ別にアプローチを変える

どのタイプであっても、仕事の難易度を落としたり、詰めたりするのは逆効果です。割り切ってツールやフォーマットを用意し、指示の仕方を変え、細かくチェックせざるを得ないようにすることで上司や仕事依頼者の指示・指導力を揃え、底上げするのです。大事なのは、苦手なことを仕事のできない相手の頭で考えさせないことです。自分の頭で考えてもチキンハートなので質問や確認することができません。考えさせるより指示と確認方法を変えるのが得策なのです。

最初に、心のバリアを外させましょう。心を閉ざしている限り、相手はこちらの指示を意図通りに受け取ることはありません。フィードバックしたりすると相手は同じチーム内でもあなたを敵とみなします。敵に心は開きません。よって、「よく頑張っているね」と存在を認めてあげることが先決です。認めてくれる人を相手は味方と感じます。味方と認識してもらえれば心を開いてくれます。ここからが本当のスタートです。

次にタイプにあわせて対応します。

 

①自分の作業スピード、段取りが悪く、いつも遅れるタイプ

このタイプは、自分なりに一生懸命やっているので仕事ができないという自覚がありません。「ちゃんとやっています。夜中まで頑張っています。」と褒めて欲しいくらいに思っていることもあります。自分で考えさせたり、工夫させたりしようとするのはムダです。自分の頭では一生懸命作業に没頭することしかできません。割り切りましょう。

上司や先輩のノウハウを具体的にツールやフォーマットにして、そのツールやフォーマットに沿って作業を指示させます。任せて後で自爆されるより、入り口で抑え込むのが一番だと、その上司や先輩を口説いて指導してもらうのです。

逆にこのタイプはオペレーションに正しく乗って作業することは得意です。意外と作業のハイパフォーマーに化けることもしばしばあることも上司や先輩に伝え、協力してもらえばいいでしょう。

②仕事の目的とゴールを確認せず、質問せず、抱え込む

このタイプは理解できたかどうか相手の口で言ってもらうことです「わかった」と言っても、自分の口で話させると何を理解していないかが浮き彫りになるので要所の確認ができます。

③細かい確認に興味がなく、間違えたまま仕事を進める

このタイプは仕事を任せ確認する単位を細かくするのが正解です。自分では間違えたという自覚がないのでほっとおくとドンドン進めていきます。

このタイプは残念なことに自分のペースでドンドン進めることが好きなので、「上司や先輩が間違える可能性があるから細かくチェックする」と悟られると自己防衛本能が働き、報告せず、進めてしまいます。「重要なことだから、ここで確認しよう!」と伝えれば相手も喜んで報告するようになるので、そう伝え、確認するように上司や先輩を指導しましょう。

 

いずれにしても仕事のできない人には期待はしない、しかしバカにもしないスタンスで接することです。仕事ができないなりに頑張っていると感じて欲しいところを認めながら、確認するプロセスを細かくしていくことが最善です。これは仕事ができない人が他部署の場合でも同様です。一つの部署内で全ての仕事が完結することは少なく、いくつかの部署や関係先とのやり取りが発生するからです。細かく確認するプロセスを入れたり、考えさせず作業に集中すればできちゃうツールを渡す。部署間を超えた確認するプロセスを置くことで被害を最小限にすることが可能になります。

一番怖いのは仕事ができない人の反乱です。重要なミスを抱え込んで大爆発させたり、パワハラ、メンタル問題で会社に訴えてきたり、外部に社内情報をリークするなど、死ねばもろともの自爆テロを仕掛けてくる現場を数多くみてきました。

人は感情の動物です。相手のレベルと心理状況にあわせた大人の対応が最終的に仕事を速くラクに進めチームの生産性をあげることに繋がるのです。

関連キーワード

[レガシーの壁を超える人事の取り組み]のバックナンバー

関連する記事一覧

メディア掲載実績

共同調査 受付中。お気軽にご相談ください。

共同調査の詳細はこちら 共同調査のお問合わせ その他のお問合わせ