「今年の学生は元気がない」のは当然だ 学生の現状を理解した採用活動を

 2022年採用が既に始まっている。2021年卒は、当初はその前年度と比べると求人の伸びは鈍化したものの「売り手市場」と予想されていた。また、事実上の「就活ルール」とされてきた経団連の「指針」が廃止された年度であり、「早期化」傾向だった。しかし、これから企業説明会や選考が本格化する春に新型コロナウイルスショックが直撃し、求人減、スケジュールの不安定化や長期化、さらには感染リスクを避けつつも採用活動を継続するためにオンライン化が進んだ。
 初めての徹頭徹尾withコロナ採用活動と、どう向き合うか。論点をあげることにしよう。今回は、学生の現状について述べることにする。

常見 陽平

千葉商科大学国際教養学部准教授/働き方評論家/いしかわUIターン応援団長

一橋大学商学部卒業、同大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士) リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年より千葉商科大学国際教養学部専任講師、2019年より現職。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。平成29年参議院国民生活・経済に関する調査会参考人、平成30年参議院経済産業委員会参考人、厚生労働省「多様な選考・採用機会の拡大に向けた検討会」参考人、第56回関西財界セミナー問題提起者などを務め、政策に関する提言も行っている。

学生の事情を理解せよ 採用活動に安心感を

求職者を理解することは、採用活動の基本である。ただ、基本であるはずなのだがこれが十分ではないがゆえに、採用活動は常に求職者とズレ続ける。しかも、世代、時代の変化というものがあり、若者像は常に変化する。経営者や人事担当者に自社の就職先としての魅力や、求める人物像を聞いて、ブレないようでズレていて呆れることがよくある。

 

特にwithコロナ時代においては、学生は想像を遥かに超えるレベルの不安やストレスを感じつつ生活している。いつもの年の学生とは違うことを意識しなくては、採用活動はズレたものになってしまうだろう。学生に寄り添っていない採用活動として、炎上するリスクもあることを理解しておきたい。

 

とはいえ、withコロナ時代の大学生活を理解するのは難しいことだろう。リアルなキャンパスに必ずしも登校できない日々が続いている。いまだに対面講義が復活していない大学もある。対面講義が復活していたとしても、人数、形式などルールに縛られており、登校する日数は以前ほどではない。以前は、若い採用担当者に大学に潜入させる、大学に挨拶に行った際にキャンパスで学生を観察するなどのテクニックもあったが、これを実行する難易度は高い。

 

ここで、大学の現状をレポートしよう。私の勤務校ではこの秋から対面講義が復活した。語学やゼミなど少人数の科目が中心ではあるが、大学に登校できるようになったのは大きな前進である。もっとも、学生にはオンラインで受講する権利も認めている。大多数は対面講義への参加となるが、一定数、オンライン参加の学生がいた。

 

ゼミ科目を中心に、オンライン参加を選んだ学生たちの面談を行ったが、それぞれの置かれている状況の深刻さに絶句した。単に「大学に行くのが面倒くさい」という学生は皆無だった。多くは家族の事情だった。同居している家族が闘病中、基礎疾患を抱えているという健康上の理由、または家族が医療や介護の従事者という事情だった。家族が感染するわけにはいかず、そのために感染リスクを最小限に抑えるために、登校を断念したのだった。家庭内も落ち着かず、疲弊している。

 

採用担当者としては、学生が新型コロナウイルスショックで不安を抱えている上、メンタル面でも相当参っている。秋田大学が行った調査によると、大学生の1割が鬱であるという。また、立命館大学の学生新聞が行った調査によると、同大学の学生の1割が退学を検討しているという結果が出た。学生が相当、弱っていることが明らかになっている。採用活動はこの現実を直視して行いたい。学生の気持ちが落ちていることに寄り添わなくてはならない。そして、選考の場でも、学生が本来の強みを出しきれないことを理解したい。

 

リアルとオンラインを組み合わせたハイブリッドな活動はマストになる。学生に過度な負担をかける採用活動は社会的にも批判されるだろう。

かっこいいリスク管理を

採用活動における感染対策はマストになる。もちろん、感染症対策はいまや、どの職場でも行われているだろう。ただ、少なくとも採用活動で学生に目に触れる対策が、学生にとって納得感があるかどうかがポイントとなる。

 

前提として理解しておきたいのは、学生たちは「新型コロナウイルス対策」を日々実践していることである。アルバイト先の飲食店や流通業などでは、各種対策を常に実施している。大学でもそうだ。

 

対面でのイベントを開催する際には、検温、体調の確認、連絡先の確認、ソーシャルディスタンスの確保、マスクやフェイスシールドの着用などは言うまでもない。特に、登壇者が熱くなると、参加者に近寄ってしまうことや、グループワーク時の参加者の距離などには注意するべきだろう。新型コロナウイルス対策に関しては、あまりにも無頓着である場合、信頼を決定的に失ってしまう。入念に行いたい。

 

リハーサルも万全に行いたい。検温や、健康状態のチェックなどは慣れないと意外と時間がかかる。受付で人が滞留すると、感染症対策上も問題があるし、なんせ学生に対する印象が悪い。

スマートな新型コロナウイルス対策をしているかどうか。このあたりも見られているということを意識しておこう。

 

なお、2022年卒は採用スケジュールも採用人数も流動的である。常にプランB、プランCを用意するべきである。感染者はまだ世界的に増えている。日本国内でもエリアによっては事態が深刻だ。何かあったときのための対応を考えておきたい。

 

やや月次な表現であるが、採用活動は学生に寄り添ったものにするべきだと強く意識しておきたい。学生が通常の年よりも心身ともに疲れていることを意識したい。面談、面接などでは、学生の話を引き出すことをこころがけたい。新型コロナウイルスショック対策で対面イベントの参加者数が減っている一方、学生のアクションは増えている。そのため、予約がとれない。映像のアーカイブを用意するなど、なんらかの受け皿を用意する工夫をしたい。何より、ひとつひとつの言動を慎重に。

 

学生に愛される採用、青臭い表現だが、これこそが求められている。学生の事情を理解した採用活動を行おう。

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