第50回:採用のセオリーをぶっ壊す①-内定者が不安にならないよう、スピーディかつ丁寧に寄り添う-
人事のレガシー50「内定者が不安にならないよう、スピーディかつ丁寧に寄り添う」
レガシーを破る視点「「この人と働きたい」、「ここで働きたい」イメージを沸かせ、不安にさせない」
松本 利明
HRストラテジー 代表
外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長級)を経て現職。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。5万人以上のリストラと6500人を超える次世代リーダーの選抜や育成を行った「人の目利き」。人の持ち味に沿った採用・配置を行うことで人材の育成のスピードと確度を2倍以上にするタレント・マネジメントのノウハウが定評。最近は企業向けのコンサルティングに加え、「誰もが、自分らしく、活躍できる世の中」に近づけるため、自分の持ち味を活かしたキャリアの組み立て方を学生、ワーママ、若手からベテランのビジネスパーソンに教え、個別のアドバイスを5000名以上、ライフワークとして提供し、好評を得ている。HR総研 客員研究員。
入社して欲しい想いが返って不信を高める
新卒の内定辞退経験は、株式会社リクルート就職みらい研究所の『就職プロセス調査(2025年卒)「2024年8月1日時点 内定状況」』によると、内定取得者のうち65.0%が内定辞退の経験があるとのことです。
言わば、内定を複数得た上で、吟味して進路を決めるのが実際です。中途採用も株式会社マイナビの「中途採用状況調査2022年版(2021年実績)」によると内定辞退率は11%もあります。
我が社が欲しい人材は、他社も欲しい人材であることが9割です。ゆえに、内定者の心が他社に移ってしまわないようにするため、内定者に定期的なフォローを実施し、疑問・質問・不安が生じた場合はスピーディに対応し、寄り添い、即不安の解消に努めることは重要なことですが、ここに罠が潜んでいます。他社も同様にスピーディかつ内定者に寄り添う丁寧な対応をするので、それだけでは差別化ができないのです。
加えて、内定辞退されたくない意識が働くため、「大丈夫ですよ」と「良い側面」ばかりを強調してしまい、逆に不安感や疑心暗鬼を与えてしまいます。
「この人と働きたい」「ここで働きたい」というイメージができて不安が初めて消える
内定者が本音で求めているのは、寄り添いや聞こえの良いことを言ってもらうことではなく、「入社後に自分が職場で働き、活躍するイメージ」をリアルに持つことです。
やりがいを感じ、成長して認められ、世の役に立つ実感が持てれば不安を覚えませんし、ライバル企業から内定が出ても、こちらを選んでくれる確度が高まります。
働くイメージを掴んでもらうには、可能なら「リアル体験」が一番です。工場や職場見学、新卒であればインターン等を行うことでカバーできる面もありますが、職種によっては「リアルに働く」を体感してもらうことが難しい場合もあります。
ですから、「この人と働きたい」「ここで働きたい」と思っていただくために、コミュニケーションの取り方を工夫してみましょう。
①「問い」を通して特別感を抱かせる
選考プロセスが最終に近づく段階から、「評価」ではなく「相談」する質問を加えていきましょう。「次の若者向けのサービスで、あなたの意見やアイディアが聞きたいので教えてくれないか」「こんなこと一緒にやりたいよね、どう進めようか」というように、入社して一緒に働くことを彷彿させる問いを投げてみると効果があります。
「私だけ特別」「頼りにされている」と求職者の自己肯定感があがる上、一緒に仕事に取り組む疑似体験を通して、入社前から求職者を巻き込み、自社の一員としての自覚を刷り込むことができます。「昨年は内定辞退が多かったのだけど、あなたならどうすれば内定辞退を減らせるか、本音やアドバイスをくれたら嬉しいな」と相談を持ち掛ける問いも同様に効果があります。
②社員に会い、継続的なコミュニケーションを取る
魅力的な社員や親近感を覚える社員を中心にアサインし、コミュニケーションを取ることで、「この人と一緒に働きたい」という意識を高めることができます。
加えて、会わない期間が長いと気持ちが離れることがあるため、懇親会、研修など、カジュアルな形でいいので、定期的に交流を持つことも重要です。
内定後、時間が経つにつれ、内定者が重要視する事項の優先度が変わることもあるので、都度、本音を掴み、解消できるよう、関係性を深めておきましょう。
③内定者同士の交流を深める
②の社員との交流だけでなく、内定者同士の繋がりを深めておくことも重要です。新卒入社の同期との関係性は今でも特別なものだからです。不安になっても同期が支えてくれることも多々あるのも事実です。注意点は同期のキーパーソンがネガティブになると、他の内定者もネガティブチェンジして集団離脱に繋がることもあります。内定者一人一人の個性や資質を把握し、チームとしてお互いの距離感でストレスが出ないようにケアすることが重要です。
まとめ
「あなたのことが大切です」とライバル企業も必ず言います。「②社員に会い、継続的なコミュニケーションを取ること」や、「③内定者同士の交流を深めること」は、他社も必ず行うことなので、ここに力を入れるだけでは、マイナス面をゼロに戻すだけで、確実な差別化は難しいものです。
キーになるのは、「①「問い」を通して特別感を抱かせること」です。特別感を抱かせるだけでなく巻き込む問いにもなります。結果、内定を出す前から既に仲間として参画している意識を与え、入社前から当事者意識を引き出すことが可能になります。この「①「問い」を通して特別感を抱かせること」は、意外と出来ている企業が少ない上、コストもかかりません。この問いを繰り返すことにより、次回まで良い意味で「後味を引く」ことで心変わりを防げます。
「内定後は残りの学生生活を満喫してください。仕事は入社してから教えるので、それまで考えなくていいですよ」が効いたのは昭和までです。今の新人はある意味、会社が一生面倒みてくれないと考えている分、戦力や成長に繋がることを強く求める傾向があるため、①の「問い出し」が要諦となるのです。
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