第24回:「働き方改革」の壁をぶっ壊す③

■ムダな仕事でも担当者は誇りを持っている

「実はムダな仕事を惰性でやっていないか」を徹底的に調査しました。

経営会議に関わる資料だけではなく、部署内でのマネジメントで使っている資料やフォーマットなど、ヌケモレなく全社分を集め、

「実際に会議やマネジメントの場面でどう使っているのか?」

「その資料は、どのような目的でいつから作るようになったのか?」

「誰がそれを指示したのか?」

について、プロジェクトチームを発足させ、徹底的に監査・調査したところ、ムダな資料が次々と出て来る結果となりました。

10年前より、2代前の社長から経営会議の時に見たいと言われ、それから毎回つくっているものの、実際の会議では使用されたことのない資料。

管理職以上の目標設定の内容を、手作業で600名分も分析してつくる200ページに及ぶレポート。人事部長がちらっと見るだけで、他には何も活用されません。

人事課長代理がこの資料を2週間ほぼ徹夜で毎回つくっているなど、現在、会議やマネジメントで活用されていないムダな資料やフォーマットが山のように出てきました。

「これらはムダだから今後作成の必要なし。もっと重要な仕事をやってくれ」と社長命で通達を出したのですが、なぜか現場からは大反発。「これは重要な仕事である。活用しない方が悪い」というニュアンスの嘆願書が山のように提出されました。

それでもムダだからやるなと言っても、現場では無視して作り続けている。もしくは、ちょっと仕様を変えて提出してくる。

「なぜ、ムダな仕事なのに現場は止めないのだ・・・涙」

 

■定説の誤り

働き方改革の第一歩は、「無駄な仕事をなくす」ことです。本当に無駄になっている仕事はもちろんのこと、テクノロジーに載せ替えることでラクになるもの。もう賞味期限が切れ、会議やマネジメントで使われなくなった資料やフォーマットは、多かれ少なかれ、組織の中に埋もれているものです。

しかし、それを検証するタイミングは、日常の仕事のプロセスではなかなか設けにくいものです。

思い切って資料の追跡調査を行い、現在やこれからも必要か?の判断をつけることは、効率化のセオリーです。

ここに、罠があります。物理的に「ムダ」「非効率」「もう過去のもので使っていない」など、止めるべき仕事が見える化できても、その担当者に「ムダな仕事をしてきたので止めなさい」と言うと、怒る、逆らう、スルーする等、反逆してくるのです。

なぜなら、指示を受けて作業していただけなのに「あなたがムダなことを垂れ流してきた」というニュアンスで受け取られてしまうからです。経営や人事から見てムダでも、その人なりにプライドを持ってやってきた仕事です。その仕事を全面否定されると、全人格まで否定されたように感じてしまいます。そして自らそのムダな仕事に意味を見いだそうとしてしまいます。仮にその仕事を取り上げても、全体の生産性につながるとは限らない仕事を新たに作り出してしまいます。そう、日本企業は職務記述書に沿って仕事をするのではなく、人に任されてしまうため、人の数だけ仕事が増えてしまうのです。

4人で担げる神輿を6人で担いだら軽くなるかといったら、そうではありません。ぶら下がる人が出てくるので、かえって重くなるのが組織心理です。ただぶら下がるだけでなく、余計な工夫を「よかれ」という心理でしてしまい、かえって全体の生産性を落とすことに繋がるのです。

■ムダな仕事を外すのではなく、もっと重要な仕事を任せる

ここは、「力の抜き所」ですが、直球的な指示や命令はデットボールになります。今まで担当していた仕事がムダだったのではなく、「その仕事は重要だったけど、優秀なあなたなので、もっと重要な仕事を担当して欲しい」といいましょう。

今までの仕事を否定せず、「優秀なあなたに全体の生産性に繋がる役割や仕事を担ってもらいたいので、重要だけど今までの仕事は止めましょう。」と持っていけば、心理的な抵抗はなくなり、スムースに仕事を切り替えられます。ただ、当の本人は現在担っているムダと言われる仕事に誇りを持っているので、心理的な納得感を持ってもらうには工夫が必要です。

新たに担っていただく仕事も、もしかしたら現在は存在しないかもしれません。本人やチーム全体で、「それをやれば生産性が上がりそう」という新しい仕事を見出し、具体的に結果に繋がりそうなら納得感が産まれます。この納得感の集合が、正解に繋がっていくのです。

それでは、具体的に解説しましょう。

■大義名分をつくることがポイント

今やっている仕事を切り出すには、大義名分が必要です。ただし、「納得感」と「それならやりたい」と思えるワクワク感がないと、見透かされ失敗してしまいます。

最初にやることは、担当している仕事のパーパス(目的)を見直すところから始めます。

■パーパスを見直す

パーパスを勘違いしている方は多数います。パーパスは確かに「仕事の目的」ですが、それはこちらで決めるものではありません。仕事やサービスの提供先がその目的通りだと認めてくれて、はじめて成立するのです。そのため、仕事を提供した時、相手が「どう喜んでくれるのか」を考えることから始めます。「どう喜んでくれるのか」については、どんな「ありがとう」という声をかけてもらうことが存在意義か?と考えれば、意外とわかりやすくシンプルな言葉で出てきます。

経理の例を出しましょう。経理のパーパスは、「確実にミスがない経理」だとします。そのパーパスであれば、周りからは「経理は難しい。手順通り書けと言われてもよくわからず、質問しても経理の専門用語ばかり並べ立てられる。その上、「No」ばっかりだ。」と本音では思われてしまうでしょう。

では、どんな「ありがとう」の声がもらえるようになれば、周りから喜んでもらえるか。「誰でもわかって簡単にしてくれてありがとう」という声を集めるとすれば、「サルでもわかる簡単な経理」という表現が経理のパーパスになります。

■パーパスを達成するため、現状からではなく、ゴールから打ち手を逆算する

次に現状は一旦無視し、パーパスを果たすには?という視点から打ち手を逆算して出していきます。この時、現状は一旦無視します。現状から考えると、どうしても延長戦上の打ち手しかでてこなくなるからです。

アポロ計画で人類が月に行けたのは、飛行機を改善し続けたからではありません。月に到着するために必要なロケットの仕様を具体化し、その仕様を実現する視点から打ち手を洗い出していったからです。パーパスを実現し、周りから期待通りの「ありがとう」の声を引き出すには、ゴールから逆算して打ち手を出すのが早道だからです。

 

■逆算した重要な打ち手にアサインし、その打ち手につながらない仕事は止める

次に、逆算して作成した打ち手の計画の実現に向けて、重要なところからアサインをしていきます。

そして、計画に沿った打ち手のアサインが終わったら、それ以外の仕事は全部廃止してしまうのです。パーパスや目指す姿につながること以外の仕事は、ただのムダだと整理できます。

ここに、キーが隠れています。

ムダな仕事をしていた人も、新しいパーパスから逆算した重要な打ち手にアサインしています。ゆえに、「今までの仕事より、もっと重要な仕事をやって欲しい」という大義名分に納得感が加わります。言わば、「北風と太陽」の太陽のアプローチです。このプロセスを追わない限り、北風のアプローチになるため、ムダと言われた仕事は手放そうとはせず、かえって意固地になります。

働き方改革は、「効率的な仕事」と「充実した私生活」、「やりがいと成長」を手に入れるものです。

「ありがとう」の声からパーパスを再定義すれば、意外とスンナリ進みますし、働き方改革を成功させている組織は、必ず実施している打ち手になります。逆に言うと、現状の延長戦から考えることによって、「欲しがりません勝つまでは」のように我慢し苦労し失敗してしまうのです。

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