第20回:「社内公募」の壁をぶっ壊す

◆人事のレガシー20:「上司をスルーして公募に応募できるようにし、希望先の上司と面談して異動を決める」
◆レガシーを破る視点:「公募は、エントリーの基準を厳しくハッキリさせ、その基準を乗り越える方法も伝える」

■社内公募制度の現実

社内の活性化、人材の引き留め、成長機会の提供を目的に社内公募制度を実施している企業は多いでしょう。

誰もが空きポジションや希望先にエントリーできるようにする。上司には内証で、希望先の上司と面談して異動を決める。

結果、優秀な人材の引き留めを実現するだけでなく、人材の囲い込みをなくし、引き抜かれても仕事が回るように組織全体のスキルアップを図ることも期待されての導入だと思います。

しかし、現実はどうでしょうか。

応募する人が「数学も統計できないけど、かっこいいし、市場価値も高くなるからAIやデータサイエンスをやりたい」などと希望し、全く適していない部署へのエントリーをする。

人事は希望者殺到の部署から「無駄な面談をする暇はない」と怒られ、応募した人は「応募したのに通らなかった」とモチベーションを下げてしまい、かえって閉塞感を招いてしまう。

応募した後、異動の打診を上司に伝えた瞬間、「部下を取られたら目標達成できなくなる。その責任を人事がとれるのか!」と一喝され、もっと上に根回しされて異動を取り消しにされてしまう。

そして公募に応募した部下は上司に睨まれ、人身御供となり居心地が悪く退職してしまう。

最終的には、社内公募の制度が骨抜きになってしまったケースも多いのではないでしょうか。

応募する人は通ることを前提として期待が高まりますが、希望が通らないとモチベーションは下がります。毎年応募しても希望が通らないことが続けば、会社や人事に対する不信感が募ります。

周りがどうみても向いていないと思う応募内容でも、社内公募に期待した分、応募した本人には裏切られた被害者意識しか生まれません。

■公募の難易度を逆転させれば解決する

基準の難易度を逆転させましょう。「エントリーが楽」で「決定が大変」、ではなく、エントリーを厳しくすることで、適切な候補者しかエントリーできず、公募による異動の決定率をあげるのです。

 

<公募は本当に必要なレベルを本音で具体的に>

公募はどの職種やリーダーに対しても均一に集まるわけではありません。人気がある職種や一緒に働きたいリーダーは限られていて、そこに応募者が集中するのです。

そこで、エントリーの必要条件の敷居をあげましょう。考え方は「ジョブ型」に近いです。

「SPSSの資格がある」「大学や大学院で統計学を学んだ」等、本当に必要な最低条件を先に提示すると、応募者は勝手な期待をしなくなります。

キーは、エントリーの基準は高くしても、入り口は広くしておくことです。

条件を厳しくすると該当者も減るので、ポテンシャルのある人材やスペックが揃った人材に限られ、厳しい条件でもエントリーしてくる人は、情報に踊らされているのではなく、本気でファイティングポーズをとっている人だけに絞られます。

思いつきの人や資質の全く向いていない人の応募が激減するため、受け入れを検討する側も無駄な工数が減り、本気の人材やスペックが揃っている人ばかりになるのでモチベーションもあがり、かつ、公募成功の確率も高くなります。

提示する条件が資格であればわかりやすいですが、それ以外の条件であれば、「どの程度できるか」「どうすれば身に着けられるか」についても明記しておくといいでしょう。

「条件が厳しすぎで無理」と諦めてしまう人も、一度は公募を考えています。身に着け方がわかれば、前向きに捉え、自らスキルアップを目指すための、いい材料にもいい刺激にもなります。

 

<ポータブルスキルを明示する>

公募の場合、専門性に焦点があたりがちですが、専門性だけでは困ります。

仕事を前に進めていくスキルが必要で、階層別に求められるレベルが変わります。これはポータブルスキルと言われ、PDCA+コミュニケーション+対人育成が該当します。

ポータブルスキルを評価項目や階層別教育、OJTにしっかり盛り込み、公募の条件にもきっちり明記しましょう。

ポータブルスキルは階層教育で誰もが身に着けておくものですが、それは職種によってはメリハリがあるからです。社内監査の仕事をするのに、正確性や徹底確認が平均やそれ以下であれば務まらないことを、公募先や人事は知っていますが、応募する人は知りません。

NGになった後、応募した人がその理由を聞かされたとなると、「あとだしじゃんけん」と捉えられ、会社や人事に不信感を持つようになります。そのため、応募者にもわかるように公募の条件としてポータブルスキルを最初に提示しましょう。

職種によっては、専門性より、ポータブルスキルの内訳の方が重視されることも多いので、一度明確にして人事の仕組みに入れ込んでおくことをお勧めします。

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