第13回:リファラル採用(社員紹介)活用のレガシーの壁をぶっ壊す!

令和になった今でも「人事のレガシー」という亡霊に取りつかれたまま、思考停止している日本企業の人事によくお会いします。第13回目は「リファラル採用(社員紹介)」に焦点を当てます。

◆人事のレガシー13:社員紹介(リファラル採用)だと我社にあった優秀な人材が採用できる

◆レガシーを破る視点:「もうええやん」と「いつか一緒に何かしたいね」を組み合わせ、欲しい人材の「質」と「量」のバランスをとる

松本 利明

HRストラテジー 代表

外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長級)を経て現職。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。5万人以上のリストラと6500人を超える次世代リーダーの選抜や育成を行った「人の目利き」。人の持ち味に沿った採用・配置を行うことで人材の育成のスピードと確度を2倍以上にするタレント・マネジメントのノウハウが定評。最近は企業向けのコンサルティングに加え、「誰もが、自分らしく、活躍できる世の中」に近づけるため、自分の持ち味を活かしたキャリアの組み立て方を学生、ワーママ、若手からベテランのビジネスパーソンに教え、個別のアドバイスを5000名以上、ライフワークとして提供し、好評を得ている。HR総研 客員研究員。

今の社員の質と同じかそれ未満の人材しか集まらない

社員の紹介なので、会社の価値観や仕事に合わなそうな人は紹介されませんが、ここに罠があります。

合コンでは自分以上のイケメンは連れていかないように、社内人材は自分と同等か劣る人材しか紹介しません。自分より優秀な人材を紹介すると自分のポジションが危うくなりかねないからです。自分より少し落ちるか、入社したら自分の部下にしたい人を紹介してくることが多いのは心理的に否めません。

結果、「我社の価値観と仕事には合っているけど、ビジネスモデルに沿ったオペレーショナルな仕事でも長期間働いてくれる人材」が集まることになります。とにかく人手さえさえあればいいということでしたら、短期的にはいいかもしれません。ただ、現在の社員の平均スキル未満で我社の文化にあっている分、辞めにくい側面があるので、「その他大勢枠」を大量に長期間抱えることになりかねません。

長期でみると社員全体の底力が目減りしていくことに繋がりやすくなります。既存のビジネスモデルを守り、太くする人材は必要ですが、新しい風や活力を与えてくれる人材も確保していく必要があります。そのためにはアプローチの工夫が必要なのです。

欲しい人材タイプに応じて引き抜き方を変える

会社の価値観に共感してくれる人材でも、オペレーショナルな人材(長く地道に働いてくれる)とイノベーションをリードしてくれる人材(新しい風)ではアプローチの仕方を変えましょう。

長く地道に働いてくれる人材は、食事会や面接などで複数名で相性などを確認した上で、逃げられないうちにクロージングする一本釣りが有効です。逆に新しい風を吹いてくれる人材は、どの会社も欲しい人材ですし、今の会社でも評価されているので引く手あまたなので待ちの釣りが必要となります。具体的に解説しましょう。

①採用候補となっていることを悟られない

まず気楽に会社に来てもらうことから始めます。いきなり面接するのはアウトです。相手は転職活動をしているわけではないので警戒されて逃げられてしまいます。食事会、勉強会など、ゆるい集まりに来ていただくことから始めましょう。経営者、管理職、現場の仲間ともざっくばらんに話してもらい、お互いの肌感覚や相性を確かめるのです。

この会では採用に関して話はしません。転職活動しているより、普通に勤め、転職を考えていない人材の中にこそ宝が眠っているからです。あなたの会社でも優秀な人材を引っこ抜かれる以外、自ら退職、転職する人はそこまで優秀な人材ではないのではないでしょうか。

なので、社員には「リファラル採用をしたいので我社に興味ありそうな人に声をかけて」ではなく、「お友達を連れてきていい食事会をするのでよかったら声かけて」くらいがちょうどいいのです。会社の会議室やプロジェクターを使って映画観賞会を定期的に実施しているが、実はリファラル狙いという会社もあるくらいです。

 

②「もうええやん」採用で、確実に見切り、数を揃える

会社の価値観に共感してくれるオペレーショナルな人材(長く地道に働いてくれる)は、量(人数)が必要です。既存のビジネスモデルを太くするために必要な人材だからです。

何度かの食事会や勉強会で経営者、管理職、現場の仲間が欲しい人材と仲良くなったころ合いをみて、「もうええやん」の一言をかけてみましょう。「君が必要だ!」「ぜひ、うちにこないか!」など、強くアピールする必要はありません。仲のいい友達だったのに告白したら関係が壊れてしまうことと一緒です。

相手は何度か会社のメンバーと会い、気心も知れ、なじんできた時の相手の本音は、「今の会社に不満はないけど、何かあったらこの会社の仲間と仕事するかも」という程度で強く転職する動機はありません。告白して失敗するとせっかくの関係が壊れてしまい、もう食事会などにも参加してもらえなくなります。

なので、「もうええやん」という弱いクロージングが効くのです。これなら断られても関係までは壊れないので次のチャンスは残されます。実際、㈱人材研究所 代表取締役社長 曽和利光氏は宝塚市の普通の不動産屋にこの方法を指導し、1年で800名の候補を集め、毎年20~30名もコンスタントに自社に合う人材を採用しているそうです。

 

③「いつか一緒に何かしたいね」採用で、引っこ抜く

AIエンジニアやその会社のエースクラスとなると、「もうええやん」の一言では引き抜けません。常により良い条件の採用オファーが多数選べる状態であり、会社でも恵まれたポジションにいるので仕事、報酬、人間関係は既に充実しているからです。報酬や仕事面であれば大手企業など、あなたの会社より有利な条件を提示されれば負けてしまいます。

エースクラスの引き抜きは長期戦でいきましょう。コツは、食事会などでいろいろ話をした後に「いつか一緒に何かしたいね」と声をかけることです。「いつか一緒に仕事したいね」と言われると、相手は「どんなことなら一緒に楽しくできるかな」という視点で考えるようになります。この一言は1回だけでは効果が薄いです。会って話をした後に必ず毎回言うのです。繰り返し言うことで、相手も繰り返し一緒に仕事をする視点で働くことを考えます。

結果、相手の脳内であなたの会社で一緒に働くことが沁み込んでいきます。ITで成長著しいA社は、この方法でエースクラスの他社の人材を毎月1名は引き抜きに成功していました。月1回程度お会いし、半年から長くても1年程度で「一緒に働きたい」と相手から連絡がくるそうです。このアプローチは経営者やエースが自ら動いて一本釣りする必要があります。エースはエース同士でないと響き合わないからです。

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