第15回:チャレンジ目標設定のレガシーの壁をぶっ壊す!

令和になった今でも「人事のレガシー」という亡霊に取りつかれたまま、思考停止している日本企業の人事によくお会いします。第15回目は「チャレンジ目標設定」に焦点を当てます。

◆人事のレガシー15:「仕事の目的を伝え、チャレンジな目標を部下に考えさせる」

◆レガシーを破る視点:「視点をかえるテンプレートをもとに、どうすればできるかを考えさせる」

松本 利明

HRストラテジー 代表

外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長級)を経て現職。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。5万人以上のリストラと6500人を超える次世代リーダーの選抜や育成を行った「人の目利き」。人の持ち味に沿った採用・配置を行うことで人材の育成のスピードと確度を2倍以上にするタレント・マネジメントのノウハウが定評。最近は企業向けのコンサルティングに加え、「誰もが、自分らしく、活躍できる世の中」に近づけるため、自分の持ち味を活かしたキャリアの組み立て方を学生、ワーママ、若手からベテランのビジネスパーソンに教え、個別のアドバイスを5000名以上、ライフワークとして提供し、好評を得ている。HR総研 客員研究員。

チャレンジしても報われないことが一度でもあれば誰もチャレンジしなくなる

ストレッチやチャレンジという言葉は「たくさん仕事をする」「難しい仕事をする」という印象を与えてしまいがちです。チャレンジして成功したり報われた人が多い組織ならいいのですが、そのような組織はあえてチャレンジと謳わなくても自然にチャレンジする文化が既に根付いています。つまり、あえて「もっとチャレンジしよう!」「ストレッチな目標を掲げよう!」と伝えている場合、チャレンジをして成功したお手本となる人材がいないことがほとんどなのです。

結果、どんなチャレンジを担い、どうすれば達成できるかわからないまま言葉だけが上滑りしてしまいがちです。そして多くの社員が、高い目標を立てて未達で評価が処遇が下がるくらいであれば、堅実な目標をたててそこそこの達成度を維持しようと考えます。結果、組織も個人の堅実な目標達成レベルに落ち着くのです。

安全と安心があって初めてチャレンジが成立する

チャレンジは「安全」がないと機能しません。「チャレンジしても大丈夫」という安心感があってこそ、人は初めてチャレンジできるのです。チャレンジによる加点は当然のことながら、チャレンジしても減点されないような評価制度や文化が重要になります。大切なのは、「たくさん仕事をする」「難しいことをする」という以外で意味あるチャレンジを見つけるノウハウを得ることです。

視点を変えるとチャレンジすべき本質的な課題と打ち手が見つかる

同じテーマでも、チャレンジには実は種類があります。種類をたくさん洗い出し、その中からスジがいいものを選べばいいのです。ステップを解説します。

①テーマを「対象」と「手段」にわける

「困難は分割せよ」は数学者のデカルトの名言です。チャレンジするテーマを「対象」と「手段」にわけて考えます。次に、それぞれ、普通だったらどんな事が考えられるか。「対象」からやってみましょう、堅実な切り口でもいいので書き出します。ここまでは普通な内容で大丈夫です。

・改善する

・難しいことをやる

・質をあげる

・範囲を広げる

・納期を短くする など

 

②切り口に逆からみた視点を加える

次に、各切り口に逆からみた視点を加えます。

・改善する ↔(逆からみると) 前例ないことをやる/もしくはやめる

・難しいことをやる ↔(逆からみると)簡単にする

・質をあげる ↔(逆からみると) 仕組みで質を担保する

・範囲を広げる ↔(逆からみると)まとめる

・納期を短くする ↔(逆からみると) 効率化・外部委託 など

この逆からみた切り口で考えると、意味あるチャレンジを見つけやすくなります。通常とは違う視点でテーマを見直すことで、そもそもの目的は変わらないので無謀や意味なしチャレンジになりません。意味あるチャレンジが見つかりやすくなるのです。

 

「手段」も同様です。よくある切り口を書き、逆の切り口を加えればいいです。

・ある程度決まっている ↔(逆からみると)前例がない など

普段と同じテーマでも、我社にとって前例のないことであればチャレンジに値します。あなたがやったことなくても、誰かがやったことがあり、それを、あなたがやってみる価値があるのでれば、これもチャレンジに値すると言えるでしょう。

この方法で意味あるチャレンジが見つかる可能性はぐっと高まります。

 

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