第17回:「内省・振り返り」のレガシーの壁をぶっ壊す!

令和になった今でも「人事のレガシー」という亡霊に取りつかれたまま、思考停止している日本企業の人事によくお会いします。第17回目は「内省・振り返り」に焦点を当てます。

◆人事のレガシー17:「しっかり内省し、その機会を増やす」

◆レガシーを破る視点:「振り返りは論点をもと行うことで正しい課題と打ち手を素早く導く」

松本 利明

HRストラテジー 代表

外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長級)を経て現職。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。5万人以上のリストラと6500人を超える次世代リーダーの選抜や育成を行った「人の目利き」。人の持ち味に沿った採用・配置を行うことで人材の育成のスピードと確度を2倍以上にするタレント・マネジメントのノウハウが定評。最近は企業向けのコンサルティングに加え、「誰もが、自分らしく、活躍できる世の中」に近づけるため、自分の持ち味を活かしたキャリアの組み立て方を学生、ワーママ、若手からベテランのビジネスパーソンに教え、個別のアドバイスを5000名以上、ライフワークとして提供し、好評を得ている。HR総研 客員研究員。

素直に振り返ると内省より反省してしまう

PDCAのキーは「C:Check」であることに異論を唱える人はいないでしょう。ここに罠があります。

日本人はなぜか内省すると反省して落ち込んでしまいます。反省する際、何か自分以外に理由を求めると言い訳している印象を与え、「私が悪かったです」となりがちだからです。

ゆえに、本質的な原因・課題が特定できず、もっと頑張る系の精神論になってしまいます。やる気や気のゆるみに依存するマネジメントは必ず途中で挫折し、「また反省して頑張る」という悪循環になってしまうのです。

内省・振り返りは「論点」を出してから行う

振り返りは論点を先に決めてから行うようにしましょう。論点をもとに振り返れば本質的な課題が見つかるので、そこを修正すればPDCAのAに繋がります。

プロのサッカーの試合でも前半と後半の15分の休憩中、前半を振り返り、後半に向け作戦、意識、行動を「修正」します。論点をもとに振り返るからこそ、短時間で修正できるのです。

5W2Hで振り返ることで問題個所が可視化される

振り返る時に、イジイジと自分を責めて悲劇のヒロインになったり、チェック項目を沢山用意して集計・分析に時間をかけても意味がありません。一番大事なのはスピードです。早く深く確実に振り返るにはプランと合わせ、5W2Hで行うのが正解です。

 

①どんな時に時間がかかるか?想定外が起こるか?(When)

②どのシチュエーションのトラブルが起きるか?(Where)

③誰と仕事をしているとトラブルが発生しやすいか? (Who)

④何をしているとときにトラブルが発生しやすいか??(What)

⑤どの打ち手がまずかったのか?うまくいきにくいのか?(How)

⑥どれだけの量をやった時にペースが狂うのか?(How much)

⑦なぜ、それがダメだったのか?(Why)

 

論点をもとに振り替えると、「あの局面でいつもエラーがおきる」「A部長は最後の最後にダメだしをしてやり直しになる」など、共通パターンが見えてきます。

この共通パターンが本質的な問題個所です。問題個所が分かれば、打ち手はおのずと見えてくるので無駄がなくなります。いたずらに落ち込んだり、誰かを責めたりする不毛な時間やストレスがなくなり、パッと前向きに切り替え、C→Aに繋げることができるようになるのです。

Why?(なぜ)は問題個所を特定してから考える

5W2Hで振り返る時の注意点は、いきなり「Why?(なぜ)」から入らないことです。外資系コンサルタントのように毎日「なぜだ?なぜだ?」と追及されることに慣れていれば「なぜ?」から入ってもいいですが、慣れていない人は危険です。

「なぜだ?」と上司に言われたら、あなたはどう感じますか?

普通の人は、自分が責められているような気になります。結果、心の防衛本能が働き、思考の停止や言い訳が頭をよぎるようになり、無駄でストレスフルな時間を取られることになってしまいます。

大事な事は、本質的な問題個所を特定し、効果的な打ち手を出すことです。まずは、問題個所をある程度特定してから「Why?(なぜ)」を考えて検証し、深掘りすることが時間的にも心理的にも最も速く効果がでます。

論点を書きだすことで誰でも客観視できるようになる

振り返りを行う時、頭の中で論点を思い描くのではなく必ず書き出すようにしましょう。

人は頭の中だけで考えると、同じところをぐるぐる回ってしまいがちです。頭の中から取り出して書き出すとスッキリし、客観視できるようになります。

一人で振り返る時はもちろん、プロジェクト、チーム、上司と一緒に振り返る時も、論点を書き出してからディスカッションするといいでしょう。人により重要視するポイントや認識が違うことがほとんどなので、書き出された論点をもとに振り返れば、事実の解釈、重要度など、目線合わせも同時に一発でできるので効率的です。

事前にメールで論点に沿って振り返っていただいたものを提出してもらって共有してもいいですし、ホワイトボードでファシリテーターがみんなの意見を聞いて書き上げていけばリアルでもリモートでも同じ効果を得ることができます。

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