第22回:「働き方改革」の壁をぶっ壊す①

人事のレガシー22:「働き方改革の意味合いを現場で考えさせ、当事者意識を引き出す」
レガシーを破る視点:「【止める会議】と【ムダ】を価値観で判断することで、不要な仕事を減らす」

■現場に意味合いを考えさせると忖度仕事が増える

働き方改革だけではなく、全社の取り組みを役員や管理職に翻訳させ、現場で打ち手を考えさせると間違いなく仕事量が増えます。

なぜかというと、「あうんの呼吸」が求められる日本企業では、上層部の言動は部下にとって大きな影響力を持っているからです。些細な投げかけまでをも含めた指示によって、更なる仕事が発生することについてはあまり問題視をされてきませんでした。

役員が明確な指示をわかりやすく伝えないために、管理職が役員の意向を汲み取ったり、推し量ったりして仕事をします。

これが、非管理職にも波及し、ムリ・ムダな仕事をさせることになるのです。上司の顔を潰さないようにと、逆に気を使うようになり、言わば「忖度仕事」が増えていくのです。

一方、働き方改革の展開に関わらず、現場には、今まで通りかそれ以上の結果が求められます。残業代を減らした分だけ、業績を落としていいとはならないからです。新しい取り組みというリスクを取るより、今までの成功パターンは崩せないため、仕事量を減らすというリスクを現場では取れないのです。

結果、今まで通りの仕事にプラスして、新しい取り組みによる忖度仕事が増えていくのです。

強制的に残業をストップできない職種や仕事は存在しています。結局のところ、「お客様の対応で」という葵の御紋がある限り、現場の今までの仕事スタイルに対して誰も「No」とは言えないのです。

■やることの前に、「止める」ことを決めて実際に「止める」

現場の仕事を「止める」・「減らす」の意志決定ができるのは、経営トップや役員しかいません。

仕事を「止める」・「減らす」には2段階あります。

全社レベルで「止める」或いは「効率化する」ことは経営トップや役員が決める必要はありますが、「止める」ことを決める場面がありません。

そのため、人事が「止める会議」を設定してしまいましょう。

もう一つは、あれもこれもやり過ぎないよう「個人」ではなく、「会社」の価値観で「Yes/No」を判断し、「No」はやらないようにする」ことです。経営と現場をくっつけるのが、人事の役割です。

現場ではなく、経営陣の意思決定やコミットで「止める」・「減らす」ことを促すので、人事の腕の見せ所です。

 

■ポイント

1)「止める会議」で部署内での形骸化した仕事を止める

人事マターではなく、社内で今やっているものの中で賞味期限切れになったものがないかを調べ上げ、「止める」・「見直す」・「残す」を判断してもらう会議を、年1回は設けましょう。

形骸化した資料の作成などをやめさせることができるのは、本人ではなく経営陣です。形骸化したと思われることを箇条書きにして、賞味期限になった理由をそこに書けば、意外と経営陣はサクサクと意思決定をしてくれます。

現実的にムダな仕事を減らすだけではなく、目の前で次々とハイテンポにムダな仕事が消えていくので、経営陣は達成感を感じ、やる気を出す効果があります。

2)部署をまたがる仕事のムダも「止める会議」で解決する

取引先・仕入先・関係先などにまたがる仕事は、会議を含めるとかなりのボリュームになります。

ゆえに、部署ごとに最適な効率化をしても、部署をまたぐと全体最適にはならないことも実は起きていますが、現場に任せるとこのムダや矛盾が見えてきません。

カード新規獲得部門は、新規申し込み数Upに向けて最適化した組織運営を行い、次のカード入会審査部門は不良債権が増えないよう審査を厳しくする。その結果、「申し込んで欲しいと頼まれたのに、カード審査で断られた」というクレームが乱発する事態などは、現場に任せれば任せるほど部分最適が進み、結果、全社矛盾が生じます。

経営会議で判断してもらうのもいいですが、部門をまたがる会議などのソフトマターを止めるかどうかの検討は、経営会議ではし難いものです。「止める会議」を活用して、全社にまたがる矛盾やムダを整理してしまいましょう。

3)効率化の判断をいただく経営管理システムを入れる

経営の一番の仕事は意思決定です。それが速く正しく経営直結できるほど、働き方改革につながる効率化はありません。現場の数字の集計を繰り返し、人の手を通すから忖度仕事が増え、経営はタイムリーに状況を判断できなくなるのです。

本気で働き方改革を実現させたいなら、現場の手を煩わせず、経営直結・経営管理のシステムを導入することです。コツはその設計を現場に任せるのではなく、役員以上自らがコミットして進めていくことです。判断する視点は、「経営の意思決定に必要な情報を、タイムリーに判断できること」です。

飛行機のコクピットのイメージがいい例でしょう。

たくさんの計器がありますが、飛行中にみているのはほんの数個です。その中で異常値があれば、他の計器をみるそうです。経営も一緒で、必要なのはタイムリーな数個の数字です。その数字にエラーが出たなら、現場に確認させればいいので、シンプルなものほど使い勝手がいいのです。

キーは、「現場が手を触れず、タイムリーに経営へと伝わるようにする」ということ。

現場に任せると、今のシステムを活かす方向で考え、システム設計も忖度システムになってしまいます。基本的には、今の業務システムにどんどんプラスしていくので、現場の入力や集計作業が増えるのと、システム会社の養分となり、多額の開発費が取られてしまいます。

鶴巻温泉の老舗旅館「陣屋」が借金10億円からV次回復した時、後を継いだ娘夫婦が手作りでこのマネジメントシステムをつくり、徹底的に効率化を行い、お客様の満足度とリピート率向上につなげ、結果、業界では異例の週休3日も成し遂げています。

■個人ではなく、会社の価値観で「Yes/No」を判断し、「No」はやらないようにする

「お客様は神様です」ではないですが、お客様のあらゆるニーズに答えようとするとお客様に振り回されることになり、そんなに儲からない上、ストレスは溜まり、働く時間は長くなります。自分達に合ったお客様に来ていただくこと、それが最も業績が上がり、ストレスは減り、働く時間も減ります。

それでは、招かざる客に振り回されないようにするには、どうすればいいでしょうか。

それは、会社の価値観を全社の「Yes/No」の意思決定の判断基準にすることです。

あなたの会社にも、経営理念はあるでしょう。その経営理念の中から価値判断基準に繋がるものを整理し、「Yes/No」の判断ができるようにすればいいのです。

格安で有名なサウスウエスト航空は、「安い」が「Yes」なので、コストがかかるものは「No」です。

例えば、ペットボトルのお水を乗客にプレゼントすると、顧客満足度は上がるけどコストがかかるから「No」。

おもしろおかしく機内アナウンスして楽しませるのは、コストがかからないから「Yes」。

このように、経営から現場まで「Yes/No」の価値観が徹底されています。

個人の価値観で現場が判断するからお客様に振り回されるのです。会社を一つの人格にみたててその価値観を判断基準にすれば、お客様に振り回されないようになります。

ブランドが際立つと、それにあったお客様が来るようになるからです。

我が社に来て欲しいお客様に、どんな「ありがとう」と言ってもらうか。そして「選んで」もらうか。

「ありがとう」の声が提供価値。「選んで」もらえるかが、「ありがとう」の声を証明する一貫性です。提供価値と、その根拠となる一貫性に沿った価値判断基準は徹底しましょう。

徹底するには、暗記させるだけなら30点です。ある事象が起きた時、誰もが同じように価値判断基準に沿ってブレなく判断できる「反射神経」を鍛えることです。

その具体的な方法は、第4回:「レガシーの壁を超える」【価値観浸透のレガシーの壁をぶっ壊す!】で解説したので参考にしてください。

[レガシーの壁を超える人事の取り組み]のバックナンバー

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