第26回:「女性活躍」の壁をぶっ壊す②-女性管理職向けのキャリアパスは失敗する-

人事のレガシー26:「女性管理職向けのキャリアパスを用意する」」
レガシーを破る視点「性別に関係なく、フェアな評価指標と組織貢献とライフステージに沿った働き方を実現できるキャリアを用意する」

女性向けのキャリアパスを描くと逆に組織は停滞する

女性活躍の推進で避けて通れないのが、管理職層に占める女性の比率問題です。

まだまだ女性管理職の比率が低い日本企業の方が圧倒的に多い。そもそも管理職になりたい女性社員が少ないことを課題に捉え、女性が活躍しやすく、管理職を安心して目指せるよう、女性管理職向けのキャリアパスを用意しよう、相談しやすいメンターを用意しようと考える企業は後を絶ちませんが、かえって女性活躍のクビを絞めることになっています。

 “女性が管理職になりたがらない”のではなく、“女性も男性も管理職になりたがらない”のが今の時代です。

キャリアパスの設計では、男性は営業、女性はバックオフィスという決めつけた前提に従うケースが多く、ややもすると主流業務は男性、サポート業務は女性という、今まで以上に女性のキャリアの可能性の幅を狭くしかねません。女性の管理職向けのキャリアパスを用意しても、職種を限った設計では、物理的に管理職のポスト数は決まってしまうため、昇進の目詰まりを起こしてしまいます。そうなると、かえって昇進意欲を失わせることしかならないのです。

評価指標こそ男女の差がでない本質的なものにする

では何が有効なのか。管理職へのキャリアパスは男女差があってはいけません。バックオフィスや販売員のように女性が多い職場だけでなく、主流部門へ女性管理職の登用を実現することで、女性管理職の活躍できる幅を広げ、管理職とその候補の人数を増やすことに努めます。そもそも男女の区別は必要ありません。男女に関係なく、生産的に働くマネジメントができるかどうかです。現在の職場の生産性を上げる共通の指標として、「時間当たりの生産性」を評価項目に入れ、ウエイトを高めることで、長時間の滅私奉公的な昇進基準から、生産性高く働きマネジメントできる人材を育て抜擢することにつなげます。

実際、サントリーのように、本気で職場の生産性改革、女性の活用を考えている組織は、「時間当たりの生産性」を評価指標に取り入れています。また、キリンビールでは、支店長などの営業の要職に女性を配置しています。この2社同様、女性活躍推進が適切に進んでいる企業は、「評価指標を時間当たりの生産性」の捉え方が一般論とは異なり、組織運営を活性化していく視点をもとに描かれています。その上で、女性のキャリアは、個々人の状況や想いで変わる、個別のライフステージに合わせた選択肢を多数選べるように工夫しているのです。

仕事を明確にし、責任をハッキリさせるだけでなく、チームの「ノリしろ」を埋めさせる

時間当たりの生産性をはっきりさせるには、個々人の役割と責任範囲を明確にすることが最初の一歩になります。ただ、これをやりすぎると「それは私の責任ではありません」症候群が出てきたり、周りが諸事情で遅れたり、早まったりしても、「私の納期ではありません」とニベもない返事がくるようになったりします。これでは個人作業のハイパフォーマーにしか成長しません。大事なのは女性のリーダーとして成長してもらうことであり、個人作業のハイパフォーマーになることではありません。時間当たりの生産性は、個人だけでなくチーム全体で上げることがより重要です。たった1人が生産性高く担当作業を終わらせても、全体の底上げができなければ、ただ浮いてしまう存在になるだけです。

従って、「時間外をゼロにしてもチーム全体で生産性を保つ(上げる)にはどうすればいいか?」という視点で職場の仕事の在り方、やり方全体を効率よく進める視点、いわばゼロベースで仕事の仕方を考えることに取り組んでもらいましょう。100m走の速い選手を集めても、バトンリレーで勝てるかといえば、必ずしもそう言いきれないことと同じです。

バトンを最速でつなぐために、個々人はどう関わるのかという論点をクリアできたチームが勝ちに近づくことと一緒です。個々人の作業を可能な限りハイパフォーマンスの状態にしながら、仕事のノリしろを埋め、バトンを速く確実に渡し、イレギュラーがあっても被害を最小限にするチーム運営の確立が、成功へのキーになります。そのうえで個人の生産性を評価することが最もフェアになります。

結果、性別の違いに関係なく、組織を活性化させる視点でフェアな評価が実現するのです。

20代の早い段階で役職に就けるか、40~50代になって子育てなどの手が離れたタイミングで役職に就けるように育てるかを決める

女性は20代後半から30代は結婚、出産をはじめ、毎年、プライベートで大きな変化が起こる可能性を秘めています。その出来事に伴い、自分の価値観や優先順位も大きく変わる波動の時期ともいえます。

従って、男性のように定年まで安定的に働き続ける前提でキャリアを設定すると、不平等になります。「産休・育休を得て時短勤務になると評価が落ち、昇進も遅れる」という仕組みは、男性中心にキャリアを設計した結果です。サントリーのように、育休明けに「フルモード」で働けるような支援がある組織は理想ですが、現時点で一気にそこまでやれる組織は、まだまだ少数派でしょう。

リクルートのように、20代前半に集中して一気にリーダーに育て、プライベートの変化がある時期にも女性が不利にならず「働き方の選択肢を選べる」ようにするか、もしくは、逆にゆっくりと専門性や職能を鍛えあげ、子育てが落ち着く40代以降に役職に就いても組織運営に影響しないような「大器晩成型」で育てるか、女性のキャリアの方向性は人事として決めておくといいでしょう。

成長機会についても、「平等」が前提です。一律的な働き方を会社の主流とし、家庭との両立のために、その一律的な働き方が難しい者は免除するような配慮では人は育ちません。育児期であっても他の事情があっても性別に関係なく成長できる機会を獲得でき、働きながら組織に貢献できるようにすること。これが、これからの時代に人事が用意すべきキャリアになります。

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