HR総研×LabBase:理系学生(院生)の実態調査 結果報告【2】

~第一志望の企業への就職活動は「自由応募」が6割、情報系院生の内定はすでに2割超~

前回に引き続き、これまであまり知られていなかった理系学生、特に理系大学院生の実態に関する調査結果を報告する。今回のテーマは「理系院生の就職活動」。
IT人材など理系人材に対するニーズが一層高まる中、理系大学院生はどのような活動スタイルで学生生活を送り、どのような考え方で就職活動に臨むのだろうか。
今回は、「理系院生の就職活動」について考察した。「就職活動の不安事項」「インターンシップへの意識の変化」「就職したい企業の条件」「就職活動の進捗状況」など理系院生の就職活動動向について、フリーコメントを含めて以下に紹介する。

<概要>

●就職活動に関する不安事項は「面接が苦手であること」と「学業と就職活動の両立」
●「一律初任給を廃止する企業」に半数以上の理系院生が魅力を感じる
●「ダイレクトリクルーティングやリファラル採用」を活用してみたい理系院生は8割
●第一志望の企業に対する就職活動は「自由応募」が半数、さらに増える可能性も
●「後付け推薦」に対して反対派が3割、修士2年では4割に増加
●「ジョブ型採用」に賛成派が6割、一律初任給廃止への意向との関連も
●インターンシップの選定基準は学部時より「専門性」や「仕事内容の理解」を重視
●修士1年の7割が就職したい企業を決めかねる
●理系院生が重視する「就職したい企業の条件」は「仕事内容」が最多
●修士1年のエントリー社数は「10社未満」が7割、専攻による違いが顕著
●「選考応募している企業はない」が修士1年の半数、情報系院生の内定はすでに2割超

就職活動に関する不安事項は「面接が苦手であること」と「学業と就職活動の両立」

まず、「就職活動に関して一番不安なこと」について、学年別に結果を見てみる。
修士1年生では、「面接が苦手であること」が24%で最多であり、次いで「学業と就職活動の両立」が17%、「自己分析ができていないこと」が11%などとなっている(図表1-1)。
これから本格化する採用選考を前にして「面接に対する不安感」が目立つとともに、前回の調査レポートで示したとおり、理系院生の繁忙度の高さが就職活動への不安感にも影響していることがうかがえる。
また就活を終えていない(就活中の)修士2年生では、「学業と就職活動の両立」が24%で最多であり、次いで「面接が苦手であること」が19%、「不安はない」が14%などとなっている(図表1-2)。やはり、修士論文の作成等による繁忙度とプレッシャーが大きくなる中での就職活動は、修士1年生より両立が困難となっていることがうかがえる。一方で、「不安はない」の割合は修士1年生より10ポイント高く、大学院で得られた知識や経験への自信が付いてきていることも推測される。

【図表1-1】修士1年生 就職活動において最も不安なこと

 

 

【図表1-2】就活中の修士2年生 就職活動において最も不安なこと

 

「一律初任給を廃止する企業」に半数以上の理系院生が魅力を感じる

新入社員においても特別スキル・能力を持った人材には特別の処遇を提示する「一律初任給を廃止する企業」への魅力については、全体では「魅力を感じる」と「どちらとも言えない」がともに35%で、「非常に魅力を感じる」が19%などとなっており、学年別に見ても同様の傾向となっている(図表2-1)。これらより、「魅力を感じる派」(「非常に魅力を感じる」と「魅力を感じる」の合計)は54%である一方、「魅力を感じない派」(「魅力を感じない」と「全く魅力を感じない」の合計)は11%であり、一律初任給廃止への支持率が圧倒的に高いことが分かる。
また、「研究テーマを仕事に是非活かしたい」という理系院生の67%が「一律初任給を廃止する企業に魅力を感じる派」である一方、「研究テーマを仕事に活かしたいと思わない」理系院生では41%にとどまっている(図表2-2)。したがって、研究テーマを仕事に活かす意向が強い理系院生ほど一律初任給を廃止する企業に魅力を感じている傾向にあり、専門知識を武器に高い処遇が受けられる可能性への期待がうかがえる。

【図表2-1】「一律初任給を廃止する企業」への意識

 

 

【図表2-2】「研究テーマの仕事への活用意向」と「一律初任給を廃止する企業」への意識

 

「ダイレクトリクルーティングやリファラル採用」を8割の理系院生が「活用してみたい」

「ダイレクトリクルーティングやリファラル採用に対する意識」について、修士1年生では、「積極的に活用してみたい」と「一度は活用してみたい」がともに41%であり、「あまり活用したいと思わない」が13%、「活用したいと思わない」が5%となっている(図表3)。これより、「活用したい派」(「積極的に活用してみたい」と「一度は活用してみたい」の合計、以下同様)が82%であり、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用に関心を持つ学生が非常に多いことが分かる。
修士2年生では、「活用したい派」が67%であり、修士1年生より15ポイント低いが6割以上が関心を持っている。

【図表3】「ダイレクトソーシング」や「リファラル採用」に対する意識

 

第一志望の企業に対する就職活動では「自由応募」が半数、さらに増える可能性も

「第一志望の企業に対する就職活動の方法」については、修士1年生では「自由応募」が48%であり、「推薦応募」が22%、「未定である」が30%となっている。また、修士2年生では「自由応募」が57%、「推薦応募」が33%、「未定である」が10%となっている。(図表4-1)。
これらより、修士1,2年生ともに「自由応募」でのエントリーが多数派であり、9割以上が就職活動を終えている修士2年生の動向から、現在「未定」とする修士1年生からも「自由応募」を選択する学生がさらに増えることが推測される。
「推薦応募」は理系学生の特権であり、より高い確度で内定を得られるエントリー方法であるにも関わらず、なぜ「自由応募」を選ぶ理系院生が多数派になっているのだろうか。

【図表4-1】第一希望の企業に対する就職活動の方法(自由応募、推薦応募)

 

 

第一希望の企業に「自由応募」を選択する理由としては、そもそも「志望企業に自由応募の枠しかない」の他、「推薦応募で採用されると内定辞退できない」「自分の実力を試したい」などが主な意見である(図表4-2)。一方、「推薦応募」を選択する理由は「確実に内定を得たい」「楽だから」「第一志望の意思をアピールしたい」などが主な意見である(図表4-3)。また、それぞれの立場から「こちらを選択しないメリットはない」という意見もある。

【図表4-2】第一希望の企業に「自由応募」を選択する理由

自由応募を選択する理由 大学区分 学年 専攻
推薦で固定できるほど第一志望が定まっていない 旧帝大クラス 修士1年 化学
第一希望の企業が自由応募の枠しかないから 旧帝大クラス 修士1年 化学
後追い推薦を使うから 上位国公立大 修士1年 機械
推薦応募が存在しないため その他国公立大 修士1年 情報
たくさん受けるため その他国公立大 修士1年 物理・数学
推薦では自由な就職活動が出来ないから その他国公立大 修士1年 化学
推薦だと企業の選択肢が少なくなるから 旧帝大クラス 修士2年 化学
推薦応募には学生にメリットがないと感じるため 早慶大クラス 修士2年 情報
自分の実力を試したいから 中堅私立大 修士2年 化学
推薦応募は採用された際に断れないから その他国公立大 修士2年 情報

 

 

【図表4-3】第一希望の企業に「推薦応募」を選択する理由

推薦応募を選択する理由 大学区分 学年 専攻
ほぼ確実に決めたいから 旧帝大クラス 修士1年 機械
推薦応募のみの選考だから 旧帝大クラス 修士1年 その他
学校推薦の方が、企業側もある程度は自分たちのことを理解してくれていると感じるから 上位国公立大 修士1年 物理・数学
自由応募だけでは不安すぎるから 上位国公立大 修士1年 機械
第一志望の意思を明確に示したいため 上位国公立大 修士1年 機械
確実に内定を得たいから 上位国公立大 修士1年 機械
自由応募よりも合格する可能性が高いから その他国公立大 修士1年 機械
できる限り早く就職活動を終え,研究や自分の時間を大切にしたい その他国公立大 修士1年 機械
明確に第一志望であれば、自由応募のメリットは特にない 旧帝大クラス 修士2年 化学
選考が楽だから 旧帝大クラス 修士2年 物理・数学

 

「後付け推薦」に対して反対派が3割、修士2年では4割に増加

「自由応募」をしたにもかかわらず、内定の条件として、選考後に教授からの推薦書を要求される「後付け推薦」に対する意識については、全体で「どちらとも言えない」が51%で、次いで「反対」が34%、「賛成」が15%となっている(図表5)。賛否を決めかねる学生が半数であるものの、反対派が賛成派の2倍以上を占めていることが分かる。
学年別に見ると、賛成派については学年による差異が無い一方、反対派では修士2年生が1年生より9ポイント高いという結果から、就職活動を経験した実感として、並行して複数の企業に応募できる「自由応募」のメリットがなくなることに反対する学生が多いのではないだろうか。

【図表5】「後付け推薦」への意識

 

「ジョブ型採用」に賛成派が6割、一律初任給廃止への意向との関連も

応募段階で職種を決めて応募する「ジョブ型採用」の拡大への意識については、全体で「賛成」が63%であり、次いで「どちらとも言えない」が31%、「反対」が6%となっている(図表6-1)。学年別に見ても、同様の傾向となっている。
「一律初任給の廃止」に対する意識の違いによる「ジョブ型採用」への賛否の傾向を見ると、一律初任給の廃止に「非常に魅力を感じる」理系院生ではジョブ型採用に「賛成」の割合が69%である一方、「全く魅力を感じない」とする理系院生では52%にとどまり、明らかに、「一律初任給の廃止」を歓迎する学生ほど「ジョブ型採用の拡大」に肯定的である傾向が見られる(図表6-2)。

【図表6-1】「ジョブ型採用」の拡大に対する意識

 

 

【図表6-2】「一律初任給廃止」と「ジョブ型採用」の拡大に対する意識の関係

 

 

インターンシップへの参加は2019年8月以降に急増し、2020年2月まで続く見通し

「インターンシップに参加した(する)月」については、修士1年生では「2019年8月」が55%で最多であり、次いで「2019年9月」が48%、「2020年1月、2月」がともに46%となっている(図表7)。
2019年8月から2020年2月までインターンシップへの参加の割合が一定割合で継続し、特に夏と冬に集中していることが分かる。

【図表7】修士1年生 インターンシップに参加した(する)月

 

 

1DAYタイプのインターンシップが人気

「参加した(参加する予定の)インターンシップのタイプ」については、理系院生では「1日」が76%で最多であり、次いで「2~3日程度」が49%、「半日」が37%などとなっており、これは2019年11月にHR総研と「就活会議」(株式会社リブセンス)が共同実施した調査による学部生を含めた理系学生全体の結果(以下、理系全体)とほぼ同様であり、院生と学部生において差はあまり見られない(図表8)。

【図表8】参加したインターンシップのタイプ

 

 

インターンシップの選定基準は学部時より「専門性」や「仕事内容の理解」を重視

「学部時におけるインターンシップ参加の有無」については、「参加した」が26%で、「参加しなかった」が74%であり、院生で初めて参加する学生が4分の3を占めることが分かる(図表9-1)。
学部時にインターンシップに参加した院生は少数派であるものの、改めて院生としてインターンシップに参加するにあたり、学部時の経験を踏まえた意識の変化があるのかを聞いてみた。

【図表9-1】学部時におけるインターンシップ参加の有無

 

 

学部時にインターンシップ参加経験がある学生における「インターンシップ先の選定基準の変化」については、「変化した」が51%であり、「変化していない」が49%となっている(図表9-2)。選定基準の変化の有無は、ほぼ2等分される結果となっており、「変化した」とする理系院生は、具体的にどのような変化があったのだろうか。

【図表9-2】インターンシップ先の選定基準の変化

 

 

【調査概要】

アンケート名称:「HR総研」×「LabBase」理系学生(院生)の実態調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)、LabBase(株式会社POL)
調査期間:2020年1月20日~2月3日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:理系学生(修士1年生、2年生)
有効回答:1,061件(修士1年生:82.5%、2年生:17.5%)

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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Eメール:souken@hrpro.co.jp

※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
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