集合研修が、デジタルライブ研修に変わる


下山 博志
株式会社人財ラボ 代表取締役社長
日本マクドナルドで32年間勤務。企業内大学を含む全社の人材育成の責任者となり、教育工学に基づく教育戦略を実践し、人材育成の仕組みを浸透させ、『2003年度日本能率協会人材開発優秀企業賞本賞』を受賞。全世界共通の教育戦略プロジェクトにはアジア地域代表として参加。2004年に退社、同年、人材開発の総合プロデュースを行う株式会社人財ラボを創業。上場大手企業から中小企業まで幅広く、人事・教育に関する戦略を支援している。企業内大学構築、リーダーシップ開発、マネジメント能力育成などの提供を行っている。早稲田大学大学院技術経営学(MOT)修士
集合型の集合研修ができない
今、世界中の人がコロナウィルス感染防止のため、仕事や生活の環境を変えざるを得ない状況に置かれています。
企業はリモートワークを導入し、学校は休校が続き、多くの人が離れた場所での仕事や学習を行うようになりました。このような状況で、仕事はネットワーク環境で行えるようになりましたが、集合研修ができなくなり、教育もネットワーク環境で行う形が注目されています。
日本ではeラーニングによる学習の仕組みは昔からありますが、ネットワークを通してライブで行われる研修の仕組みはあまり活用されていませんでした。
欧米では「バーチャルクラスルーム」「バーチャル研修」「デジタルライブ研修」などと呼ばれ、ここ数年でインフラも整備され、企業や学校で研修、授業を補完する仕組みとして、活用されるようになりました。
デジタルライブ研修とは
ここでは、「デジタルライブ研修」という呼び方で、導入のポイントを説明します。
ネットワークを使った教育は、ライブセミナーやYoutube、WEB会議の仕組みなどを使って、手軽に始められることもあり、近年欧米では急拡大しています。
今後も、コロナウィルス騒動により、さらに拡大することが予想されています。
一方で、先行してデジタルライブ研修を始めた企業や学校の導入後の状況から、様々な課題もわかってきました。
そもそも、集合研修とeラーニング、デジタルライブ研修では次のような違いがあります。
デジタルライブ研修を行うシステムは、世の中に沢山あります。ネットワーク環境があり、研修講師や、パワーポイントなどの研修教材があれば、すぐにでも初められ、導入できます。
一方で、先行して始まった、欧米の例では次のような問題が発生しています。
・参加者が集中して参加しない
・実際の研修と違い講師がうまく話せない
・参加者同士のコミュニケーションが取れない
・ITリテラシーが低い参加者は学習する時の障害になる
・通常のeラーニングとの違いがわからず学習効果が低い
このような事が原因で、一度は行ってみたが学習効果が低く、続かなかった例が散見されます。簡単に導入はできますが、デジタルライブ研修は集合研修とは、環境が違うため、このような導入のやり方が間違っています。
導入のポイント
それでは、成功している例から何がポイントになるが考えてみましょう。
いくつかの企業で、デジタルライブ研修を導入してきた実績から、成功と失敗の違いが明らかになっています。
デジタルライブ研修を効果的に活用するには次の3つのポイントを押さえる必要があります。
1.学習環境の整備
学習するためのシステムは、無料のものから大規模な学習管理システムまで様々で、WEB会議の仕組みでも代用はできます。
但し、学習する環境として、講師と学習者の環境を整備することが重要です。
2.講師の育成
集合研修と同じ講義では、学習効果が得られません。デジタルライブ研修に特化した、プレゼンテーションスキルやファシリテーションスキルが必要です。数回の経験で学べる講師育成のための専用プログラムや教科書もあります。
3.学習コンテンツの作成
集合研修で使用したパワーポイントなどの教材では、学習効果が下がります。デジタルライブ研修では、ネットワーク環境ならではの、集中力・学習モチベーションが湧く教材作成が必要です。ネットワークを介して、ディスカッションやホワイトボードを使用した協議・発表もできますので、これらに対応した専用のコンテンツを開発する必要があります。
これから、会社も学校も、教育の仕組みとして、デジタルライブ研修を当たり前に活用する時代がきます。今回の新型コロナウィルスによって、米国などでは、全ての学校で自宅学習を行えるようにする準備が始まっています。企業も集合研修が全く無くなることは無いと思いますが、コストや時間の面からも、eラーニングやデジタルライブ研修が広がってゆくと思います。