HR総研:働き方改革(HRテクノロジー)に関するアンケート 結果報告

~HRテクノロジー導入企業は2割、「テレワーク環境への対応」に導入成果ありが7割~

働き方の多様化や雇用の流動化が進む中、人事担当者の記憶や経験則にもとづく従来方式での管理では対応が難しくなりつつあり、人事に求められる役割はより高度化している現状にある。例えば、新型コロナウイルスの影響を受け、外出自粛によりテレワークを実施する企業では、社員の評価基準の明確化や公平性の担保が喫緊の課題となっている企業も少なくないのではないだろうか。業務効率化のみならず、このような課題を解決するのがHRテクノロジーである。
日本企業におけるHRテクノロジーの普及状況や導入による成果、ツールの選定基準など、HRテクノロジーの導入に関する企業の動向を、フリーコメントを含めて以下に紹介する。

<概要>

●HRテクノロジー導入率は未だ2割、「導入予算がない」「コロナ対策を優先」などの理由
●導入企業の6割「数値化による意思決定の精度向上」を目的に、「評価/アセスメント」や「採用」に導入
●「テレワーク環境への対応」の目的達成率が最多で7割、コロナ禍の影響か
●導入で直面した課題は「既存システム・データとの連携」で4割
●追加導入を検討する企業の目的は「エンゲージメント向上」が最多
●導入を検討している領域は「人材配置」、「評価/アセスメント」が6割近く
●「使い方が分かりやすい」が最重要、「提供会社の知名度」「取引関係」は重視せず

HRテクノロジー導入率は未だ2割、「導入予算がない」「コロナ対策を優先」などの理由

「HRテクノロジーの導入」について、「導入している」は17%、「導入しており、追加導入を検討中」が5%、「はじめての導入を検討中」が23%、「導入の予定はない」が55%となっている。「導入している/追加導入を検討中」(「導入している」と「導入しており、追加での導入を検討中」の合計、以下同じ)は22%と2割にとどまっており、HRテクノロジーは未だ広く普及しているとは言えない状況にある(図表1-1)。
これを企業規模別に見ても、すべての企業規模において「導入している/追加導入を検討中」が2割程度となっており、「はじめての導入を検討中」については従業員数1,001名以上の大企業で27%と、他の企業規模より割合が若干高くなっている(図表1-2)。
また、昨年調査と比較すると、全体では、「導入している/追加導入を検討中(今回調査から追加)」の割合は昨年調査(11%)より11ポイント上昇し2倍になっているものの、大企業では「はじめての導入を検討中」について昨年調査時(65%)より38ポイントも大きく低下している。今回のコロナ禍対応ではある程度の進展が見られたものの、今後のHRテクノロジーの普及スピードは減速傾向にあることがうかがえる。

【図表1-1】HRテクノロジーの導入状況

 

 

【図表1-2】企業規模別 HRテクノロジーの導入状況

 

 

HRテクノロジーを導入しない理由としては、「導入予算が無い」や「導入の必要性が分からない」が目立っており、さらに「新型コロナウイルスの影響への対策を優先」等の理由により、HRテクノロジーの優先順位は下がっている(図表1-3)。
したがって、HRテクノロジー導入により新型コロナウイルスへの対策を含めた企業の課題解決への効果を示すことができれば、今後のHRテクノロジーの普及スピードは再び加速されることも考えられる。

【図表1-3】HRテクノロジー導入を検討しない理由(一部抜粋)

導入を検討しない理由 従業員規模 業種
HR上の優先順位が高くない 1,001名以上 サービス
今年はコロナウイルスの影響で予算削減が掛かっているため、新規投資は控えている 1,001名以上 メーカー
検討したいがその成果を評価が難しい 1,001名以上 メーカー
費用面の負担、検討する時間がないこと 1,001名以上 メーカー
現時点では必要性を感じない 301~1,000名 サービス
経営者の理解が得られないため 301~1,000名 サービス
導入メリットを大いに感じられるものがまだない。 301~1,000名 メーカー
検討したいが、コロナ対策で手一杯 301~1,000名 情報・通信
情報収集段階のため 300名以下 メーカー
よく理解していない 300名以下 メーカー
企業規模を鑑みて、コストがペイできない 300名以下 情報・通信

導入企業の6割「数値化による意思決定の精度向上」を目的に、「評価/アセスメント」や「採用」に導入

すでにHRテクノロジーを導入済みの企業に対し、その導入目的を聞いたところ、「数値化による意思決定の精度向上」が59%と最多であり、次いで「従業員情報の一元管理」が45%、「作業コストの削減」、「定型業務量の削減」がともに31%などとなっている。上位に挙がる導入目的から、主観による評価の偏りや業務効率化に関する課題の解決をHRテクノロジーに求める企業が多いことがうかがえる(図表2-1)。
また、そのような目的を達成するために導入されているHRテクノロジー領域については、「評価/アセスメント」が59%と最多であり、次いで「採用」が45%、「労務管理」が43%などとなっている。これらのいずれも煩雑で扱うデータ量も多い人事業務に対してHRテクノロジーを活用することで、これまでの「経験と勘」ではなく、「データとエビデンス」による適正な評価から高精度の意思決定に繋がるとともに、人的負担が軽減するなど、企業と従業員あるいは選考応募者ともにメリットが得られることが期待される(図表2-2)。
では、実際にHRテクノロジーを導入することによって、達成されている目的はどのようなものなのだろうか。

【図表2-1】導入済みHRテクノロジーの導入目的

 

 

【図表2-2】HRテクノロジーを導入している領域

「テレワーク環境への対応」の目的達成率が最多で7割、コロナ禍の影響か

HRテクノロジー導入の目的として挙げられた各項目に対して、導入したことで達成された項目は、「テレワーク環境への対応」が70%で最も多く、次いで「定型業務量の削減」が68%、「属人的作業の標準化」が67%などとなっている(図表3)。
目的達成率が最多となった「テレワーク環境への対応」は、前述のとおり導入時の目的として挙げる企業の割合は22%と決して多くはない。しかし、新型コロナウイルスの影響を受けて、企業活動や従業員の働き方が一変し、Withコロナを前提とした働き方のニューノーマルが創り出されようとしている中で実施した本調査の結果として、HRテクノロジーが「テレワーク環境への対応」に大きく貢献しているという実態が浮かび上がっている。
その他の上位に挙がる目的達成項目としては「業務効率化」に関するものが並んでおり、最も多くの企業が導入目的としている「数値化による意思決定の精度向上」の目的達成率は31%にとどまっており、効果を感じている企業は少ないことがうかがえる。

【図表3】HRテクノロジーの導入で達成できた目的

HRテクノロジー導入によって得られた具体的な成果

HRテクノロジー導入によって得られた具体的な成果について、以下に一部抜粋して紹介する(図表4)。

【図表4】導入によって達成できた成果(一部抜粋)

導入によって達成できた成果 従業員規模 業種
採用プロセス管理の時短と効率化が達成された 1,001名以上 メーカー
エンゲージメト向上 1,001名以上 メーカー
労務手続きなど業務のマルチタスク化ができた 301~1,000名 サービス
業務の自動化、完全テレワークの実現 301~1,000名 情報・通信
紙の書類で管理しているものがほぼなくなったため、テレワークに変更した際に支障がなかった 301~1,000名 運輸・不動産・エネルギー
経営の制度や施策の導入・改訂に関する意思決定を数値により支援することができた。女性の勤続年数を8.1年から9.4年に伸ばすことができた 300名以下 サービス
情報の集約、一元管理、加工引用の際にソースを統一 300名以下 サービス
選考に参加した人の情報が一元管理できるようになったので、いちいち検索をする手間が無くなった 300名以下 情報・通信
日々の残業時間、連勤状況が管理でき、事前に注意できるようになった 300名以下 マスコミ・コンサル

導入で直面した課題は「既存システム・データとの連携」で4割

HRテクノロジーを導入していない企業のその主な理由として「導入予算がない」や「導入の必要性が分からない」が挙げられるが、導入済みの企業が実際に導入する際に直面した課題は、どのようなものなのだろうか。
最も多い課題は「既存システム・データとの連携」で43%、次いで「必要データの洗い出しと収集」が41%、「HRテクノロジーを理解・活用できる人材の不足」が31%などとなっている(図表5)。
この結果から、実際に導入する際には、様々な視点で自社の現状を洗い出し、自社の現状とより相性の良いHRテクノロジーツールを選定することが必要であることが分かる。また、4~6位には、「(一般社員や経営陣の)理解促進」や「目的・目標の明確化」が並んでおり、導入するHRテクノロジーを効果的に活用するためには、ユーザー側の十分な理解を得ることも課題となりやすいことがうかがえる。

【図表5】HRテクノロジーの導入に際して直面した課題

追加導入を検討する企業の目的は「エンゲージメント向上」が最多

続いて、導入を検討中の企業においてその目的を聞いたところ、「属人的作業の標準化」が最多で68%、次いで「定型業務量の削減」が63%、「作業コストの削減」が62%などと業務効率化に関連する項目が並んで6割を超える一方、すでに導入済みの企業において最も多い目的である「数値化による意思決定の精度向上」は5位で37%にとどまっている(図表6-1)。
導入状況別に見ると、新規導入を検討する企業では全体と同様に「属人的作業の標準化」(73%)、「定型業務量の削減」(71%)、「作業コストの削減」(65%)が上位に並ぶ一方、追加導入を検討する企業では、新規導入の目的とは異なり「エンゲージメント向上」が最も多く67%となっており、単なる業務効率化のみにとどまらず、より高度なHRテクノロジーを活用した人事業務を目指していることがうかがえる(図表6-2)。
では、このような目的を果たすべく導入を検討する領域はどのようなものだろうか。

【図表6-1】導入検討中のHRテクノロジーの導入目的

 

 

【図表6-2】導入状況別 導入検討中のHRテクノロジーの導入目的

導入を検討している領域は「人材配置」、「評価/アセスメント」が6割近く

HRテクノロジーの導入を検討している企業のその領域は、「人材配置」が59%と最多であり、次いで「評価/アセスメント」が56%、「育成」が41%などとなっている(図表7-1)。
導入状況別に見ると、「新規導入を検討する企業」では「人材配置」が65%、次いで「評価/アセスメント」が53%などとなっている。多数の従業員を対象とした業務における「属人的作業の標準化」や「定型業務量の削減」等に繋がるとともに、人間の主観や先入観などに左右されない適正配置の検討や公正な情報分析による評価等への活用が期待されている。また、「エンゲージメント向上」を導入目的とする割合が最も多い「追加導入を検討する企業」では、「評価/アセスメント」が最多で67%、次いで「育成」と「モチベーション管理」がともに42%となっている。個々のニーズに適した教育を提供できるHRテクノロジーにより人材育成を効果的に行うとともに、パルスサーベイにより社員の状態を常に把握しタイムリーなフォローを実施することで、社員のモチベーションを向上させる効果も得られることが期待されていると推測される(図表7-2)。

【図表7-1】HRテクノロジー導入を検討している領域

 

 

【図表7-2】導入状況別 HRテクノロジー導入を検討している領域

 

 

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】働き方改革(HRテクノロジー)に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2020年5月18日~24日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者、人事担当者
有効回答:221件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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Eメール:souken@hrpro.co.jp

※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
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