第3回:エンゲージメントサーベイの導入と活用

このコラムでは、昨今注目を集めるエンゲージメントについて解説する。第3回となる今回は、エンゲージメントを把握したり高めたりするために用いられるサーベイの種類、選び方、活かし方を紹介する。

伊達 洋駆

株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役

神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。同研究科在籍中、2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、人事領域を中心に、組織の現状を可視化する組織診断を始めとした調査・コンサルティング業務を提供している。学術知と実践知の両方を活用したサービスが特徴。

エンゲージメントサーベイの種類

一般にサーベイでは、アンケートへの回答を従業員に求め、回答データを集計・分析する。エンゲージメントサーベイは、その名の通りサーベイの一種であり、エンゲージメント向上や現状把握などを目的に実施される。

エンゲージメントサーベイには「パッケージ型」と「オーダーメイド型」の2種類がある。パッケージ型は、質問項目と計算方法があらかじめ決まっているのに対して、オーダーメイド型は、企業の状況に応じてそれらを作る。

 

パッケージ型は、導入を決めたらすぐに実行できる手軽さがある。その手軽さ故に、サーベイ実施の費用もそこまで高価にはなりにくい。

だが、質問項目と計算方法が所与であるため、融通が効かず、自社に合わせた対応は難しい(オリジナルの質問項目を追加できるパッケージ型もあるが、追加できる質問項目はわずかである)。

他方で、オーダーメイド型の長所は、各社の置かれた現状を踏まえて、質問項目と計算方法を作ることができる点にある。ただし、その分、サーベイの費用は大きくなり得る。

また、オーダーメイド型の実施には専門性が必要だ。専門性が十分にない企業がオーダーメイド型を提供すると、測定したいものが測定できなかったり、対策が検討できない結果が得られたりすることがある。

エンゲージメントサーベイの選び方

エンゲージメントサーベイはパッケージ型とオーダーメイド型に大別でき、更に、パッケージ型は様々な製品が市場に投入されている。何に注目してサーベイを選べば良いだろうか。以下の点に注目して考えてみよう。

・信頼性と妥当性は検証されているか

・自社のエンゲージメントの定義に合うか

・影響要因の根拠は十分なものか

信頼性と妥当性は検証されているか

サーベイを選ぶ上で第一に確認すべきは「信頼性」と「妥当性」だ。信頼性は、サーベイで測定した結果が安定・一貫していることを意味する。例えば、期間をあけても同様の結果が得られたり、同じ概念を測定する複数の項目が相関していたりすれば、信頼性は高い。

妥当性は、サーベイで測定したいものを本当に測定できていることを指す。例えば、質問項目が概念を的確に反映しているかを専門家がチェックしたり、類似する概念は高い相関、類似しない概念は低い相関になるかを分析したりすることで、妥当性を検証する。

 

 

 

パッケージ型の場合、提供企業に直接「信頼性と妥当性をどのように検証しましたか」と聞くと良い。オーダーメイド型の場合、サーベイ実施者が信頼性と妥当性に関して適切な知識と経験を持っているかを確認しよう。

信頼性と妥当性は、サーベイが満たすべき最低限の要件である。パッケージ型でもオーダーメイド型でも、信頼性と妥当性を確保していないものは、導入を見送ることを勧める。

自社のエンゲージメントの定義に合うか

次に、エンゲージメントの定義を明確化しよう。エンゲージメントサーベイを実施しようと考える背景には、自社なりの「目指すべき状態」があるものの、「現在はそこに到達できていない」という問題意識があるはずだ。

自社がエンゲージメントという概念に注目した理由を再考し、自社なりのエンゲージメントの定義を言語化する。その後、定義に合致するサーベイを探していく。

パッケージ型の場合、エンゲージメントの意味するところを公開しているはずだ。各社の定義は割と異なっている。定義を丁寧に確かめよう。

エンゲージメントの定義については、経営者と事前にすり合わせしておくことが望ましい。例えば、人事部が「会社に貢献する気持ち」をエンゲージメントと定義してサーベイを実施し、経営者に結果を報告しに行ったところ、「会社に貢献する気持ち」なんて不要だ、と言われてしまったら、取り返しがつかない。

なお、自社の定義と合致するパッケージ型のサーベイが見当たらないときに、オーダーメイド型の導入を検討しよう。オーダーメイド型であれば、自社の定義に合わせてサーベイを設計できる。

影響要因の根拠は十分なものか

エンゲージメントサーベイの結果表を見ると、エンゲージメント以外の要素が含まれていることに気づく。エンゲージメント以外の要素を測定しているのは、「それらの要素を高めればエンゲージメントが向上する」からである。

エンゲージメントを促す諸要素を、ここでは「影響要因」と呼んでおく。エンゲージメントサーベイを選ぶ際には、影響要因の品質を評価したい。

 

まず、影響要因がエンゲージメントを高める根拠はあるか。なぜ、その要素をサーベイに含めるのかをサーベイ提供企業に質問すると良い。

その根拠は、納得できるものなのかも検討しよう。これまでの実務経験と照合したり、先行研究と比較したりしながら、本当にエンゲージメントに影響するのかを吟味する。

更には、影響要因が自社に不足していると分かったときに、それを高める対策が実行できるか否かも考慮に入れる必要がある。例えば、制度変更を全く予定していないのに、制度への満足を測定するのは非効率だ。

パッケージ型を探しても、良い影響要因がないなら、オーダーメイド型を導入する方が良い。適切な根拠に基づく、対策可能な影響要因を考えるところから始められるのが、オーダーメイド型の利点である。

 

エンゲージメントサーベイの活かし方

自社に合ったサーベイを選ぶことは重要だが、サーベイ結果の活用方法を工夫しなければ、望む改善は実現できない。

サーベイ結果の活用において、とにかく意識しなければならないのは、結果を前に一旦立ち止まり、解釈を行う時間をとることだ。サーベイ結果を無条件で全肯定するのは危険である。回答者の偏りや回答時の気分など、諸々の影響で「たまたまその結果が得られた」可能性もある。

 

なぜ、そのような結果が出てきたのか説明を試みよう。例えば、営業部で「上司からの支援」が低いときに、「営業部は中途入社の管理職が多く、上司部下関係が十分に築けていないからでは」といった具合に、理由を言葉にしてみる。

理由が論理的に説明できないサーベイ結果を、即座に信じるのは避けたい。よく分からない結果に基づいて対策を打つのは危険だし、誠実な姿勢でもない。

 

サーベイ結果の解釈プロセスは、対策の検討プロセスと部分的に重なっている。「なぜ、それが生じたのか」について考えれば、「次に何をすべきか」は考えやすくなる。入念な解釈は、質の高い対策の立案につながる。

なお、結果解釈と対策検討については、現場の管理職を巻き込むのが良い。自分の上司からサーベイ結果のフィードバックを受けた方が部下は前向きに受け止める、との研究もある。管理職に対しては、サーベイ結果と対策に関する情報共有を十分に行っておこう。

 

以上、このコラムでは、エンゲージメントサーベイの種類、選び方、活かし方について解説してきた。現在、多くの企業がエンゲージメントサーベイを提供している。是非、サーベイ実施の参考にしていただきたい。

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