第52回:採用のセオリーをぶっ壊す③-現場の管理職が面接を担当し、適材を見抜くはずだったが・・・-

人事のレガシー52「管理職に採用権限を委譲し現場・実務に適合した人材を採用する」

レガシーを破る視点「一緒に働きたいと誰もが感じる人材を採用する」

松本 利明

HRストラテジー 代表

外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長級)を経て現職。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。5万人以上のリストラと6500人を超える次世代リーダーの選抜や育成を行った「人の目利き」。人の持ち味に沿った採用・配置を行うことで人材の育成のスピードと確度を2倍以上にするタレント・マネジメントのノウハウが定評。最近は企業向けのコンサルティングに加え、「誰もが、自分らしく、活躍できる世の中」に近づけるため、自分の持ち味を活かしたキャリアの組み立て方を学生、ワーママ、若手からベテランのビジネスパーソンに教え、個別のアドバイスを5000名以上、ライフワークとして提供し、好評を得ている。HR総研 客員研究員。

現場の声が全て正解だとは限らない理由

現場の管理職が面接官になるのは重要ですが、各現場の管理職ゆえに人を見る目はバラバラです。その結果、「できる人ほど採用基準が高く全然合格が出ない」「自分に似たタイプの人材ばかり評価する」「自分が責任を取りたくないために、採用基準が甘くなる」「自部署の仕事を回すためにピンポイントで欲しい専門人材を選ぶ」「本人のキャリアは考えておらず、実質使い捨て」といった現象が発生します。なぜかというと、現場の管理職は自分のマネジメントによって期待された成果を出すことが仕事であり、それが意識の中心になるため、そのマネジメント感覚による採用基準がバラバラだからです。面接トレーニングを受けて目線合わせを行い、トレーニングの場で目線を理解しても、トレーニングはあくまでトレーニング。面接のテクニックを学び、そのスキルを使えるようになっても、採用面接の本番となると、どうしても自身の感覚で目利きをやってしまうものなのです。

現場に「任せる」ために仕組で品質を担保する

「運用」の局面で面接官を信じて委ねるのではなく、「仕組み」の段階で採用判断の品質担保・管理を行うことが正解です。運用を委ねると、最後は各自の主観の判断になってしまいます。各自の主観は、その人にとっては正義です。正義のぶつかり合いに正解はなく、時間と労力を使いストレスが溜まるだけです。AIではないので面接官の目線を100%合わせることは難しいのですが、仕組みを作っておけば一定以上の品質管理は可能になるので工夫しましょう。

質問のリアクションでMVVと同じ判断基準か見極める

どんな仕組みで採用する人材の品質担保を行うかというと、ポイントは2つあります。

1つは、現場管理職の主観抜きに、自社の機能に合った資質がある人材、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に近い判断基準を持つ人材を人事がスクリーニングし、大きな外れをなくす方法です

具体的には本連載の「第4回:価値観浸透のレガシーの壁をぶっ壊す!」(https://hr-souken.jp/article/1907/)を参考に、MVVをYes/Noの判断基準になるように具体化し、判断に迷うよくあるケースを求職者に解いてもらい、判別するといいでしょう。キーは、求職者に時間をかけてケースの答えを出させるのではなく、「リアクション」で判断することです。

「御社の経営理念に共感します」と求職者は誰もが言うでしょうし、そもそも求人に応募するくらいですから、採用プロセスで落とされないよう、事前に可能な限り「作文」を準備してくるものです。

作文は対策ができますし、時間をかけてそれらしい内容を準備することができるので、これに頼って採用判断しようとすると見誤ります。人は「リアクション」では嘘がつけず、本音がでることは心理学の世界では常識です。ゆえに、ケースは面接の中で話をしてすぐ理解できる量におさえ、複数回のケースを口頭で答えてもらうことで対策不可能な本音の姿を見切りやすくなります。

当然ですが、MVVは経営から現場まで全社共通の判断基準なので、この判断基準に近しい人材を選べるよう仕組化するといいでしょう。

「囲い込み」や「育成無責任」ができない仕組みを用いる

もう1つは、「囲い込み」「育成無責任」の回避です。囲い込みとは、「私の部下としてこの仕事を任せられる人が欲しかった、まさにこの人材はピッタリだ」とピンポイントで採用することです。ジョブ型の場合は採用を含めた要員管理も現場(事業側)に任せがちなので、このような現象が発生しやすくなります。確かに、ピンポイントで機能すればいいのですが、万一ミスマッチが起きた場合は試用期間中に即クビにしたり、仕事が回らず困ったりするので、現場としては同スペックの頭数を増やそうとします。また、採用した人材がうまく現場に適合した場合、上司は特定の仕事をその人に張り付け、囲い込みます。結果、囲い込まれた人は、その仕事以外のキャリアが望めず塩漬け状態になるため、あるタイミングで見切りをつけて離職してしまいます。このような悪循環を断ち切るためには、「欲しい」という希望の他に、「その人の育成責任を負います」という意思表示がない限り、採用は見送る仕組みにすればいいのです。この仕組みにすると、「合格させたけど育成する気はない」という育成放棄を阻止できます。

当然、育成できなければ、その管理職の評価は落ちるメカニズムにして、真剣度を上げます。上司を選べるようにする制度の導入も一考です。今は「仕事ができても、誰もついていかない」人はリーダーとして認められなくなりました。ゆえに、「このリーダーについていきたいか、否か」「このリーダーについていきたいと周囲も思っているか、否か」「このリーダーは部下を守ってくれるか、否か」「このリーダーの下にいると成長できるか、否か」などの基準で多面評価を行い、票を集める人を管理職として登用し、そうでない人はスペシャリストとして一人で活躍してもらえるような仕組みにすることも効果があります。

結果、管理職も適正化され、採用時にもみんなが一緒に働きたいと感じる求職者に票が集まる好循環が生まれます。

関連キーワード

[レガシーの壁を超える人事の取り組み]のバックナンバー

関連する記事一覧

メディア掲載実績

共同調査 受付中。お気軽にご相談ください。

共同調査の詳細はこちら 共同調査のお問合わせ その他のお問合わせ