第56回:採用のセオリーをぶっ壊す⑦-人材紹介会社なら信用できると思って任せたのに…-

人事のレガシー56「人材紹介会社のプロのアドバイスを素直に聞く」

レガシーを破る視点「人材紹介会社は「情報源」と割り切った上でいい関係性を築く」

松本 利明

HRストラテジー 代表

外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長級)を経て現職。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。5万人以上のリストラと6500人を超える次世代リーダーの選抜や育成を行った「人の目利き」。人の持ち味に沿った採用・配置を行うことで人材の育成のスピードと確度を2倍以上にするタレント・マネジメントのノウハウが定評。最近は企業向けのコンサルティングに加え、「誰もが、自分らしく、活躍できる世の中」に近づけるため、自分の持ち味を活かしたキャリアの組み立て方を学生、ワーママ、若手からベテランのビジネスパーソンに教え、個別のアドバイスを5000名以上、ライフワークとして提供し、好評を得ている。HR総研 客員研究員。

人材紹介会社は「自社が儲かる」視点で全てを考えている

人材紹介会社を活用せず、全て自前で潤沢に採用できている企業はごくまれな存在です。

ただでさえ労働人口が減り続け、転職の対する抵抗感がほぼ消えた昨今では、優秀な人材が引き寄せられていくごく一部の企業と、採用含め人材確保に苦労する企業と二極化し、採用格差が年々広がっているのが実際です。

ゆえに、自社の欲しい人材を確保するために、人材紹介のチカラを借りることは当たり前になってきています。確かに人材紹介会社は、数多くの求人と求職者のマッチングを行ってきた実績があるゆえ、中途採用に関するノウハウがあると考えることはその通りです。しかし、ここに落とし穴があります。人材紹介会社は慈善事業ではなくビジネスを行っています。なので、自社が儲かる基軸で採用ノウハウを積み重ねています。「PR・広告費は渋く、報酬額は業界でも低い水準に留まり、社会的に無名に近い会社の採用を成功させる」よりも、「PR・広告費を別途確保してくれて、報酬額も業界水準より高く、社会的によく知られている会社の採用支援」のほうがラクに速く儲かるため、後者を優先します。例えば、採用成約時のキックバック率の高い求人案件を優先します。採用に強いとアピールしている場合も、ここがベースのノウハウになります。

従って、PR・広告費は用意できず、求人条件は平均かそれ未満、ほぼ無名の会社に対して提供できる「うまくいく中途採用のノウハウ」などは、ほぼ持ち合わせていないと思ったほうがいいでしょう。人材紹介会社もビジネスなので致し方ないところです。

人材紹介会社は「悪魔」でも「天使」でもなく「情報源」として見切る

誤解して欲しくないのですが、人材紹介会社は全く悪くありません。上記のような特徴・事情を前提にしたうえで、人材紹介会社だからこそ持っている価値を活用しましょう。具体的には「情報」です。人材紹介会社は、今、どの業界のどの職種、どのような企業が中途採用を強化しているのかという採用市場の最先端をつかんでいます。表に出ない求人や裏情報まで広く、深く知っています。求職者側の傾向も同様につかんでいます。そうした「情報源」を活用することで、欲しい人材にダイレクトに響く求人票を作ればいいのです。その結果、すぐ決まりそうな求人なら、人材紹介会社は積極的に求職者にアピールしてくれます。

人材紹介会社は、沢山のクライアントを持っているため、他社の中途採用動向にも詳しいです。当然、守秘義務があるので、他社の中途採用の裏事情をダイレクトに教えてくれることはありませんが、採用活動を成功させるためのコツを聞けば、他社で取り組んでいる採用活動や手法をとりまとめ「ベストプラクティス」として教えてくれます。
人材紹介会社は、クライアントが採用できないと売上が上がらないため、嘘や駆け引きなく素直に教えてくれるものです。そこを逆手にとるのです。教えてくれたベストプラクティスや具体的な傾向・コツは、他社にも同じように指導している内容なので、それをそのまま実行しても、他社も同じようなことを行うだけなので、実は差別化は図れません。そのままでは採用に有利な条件をもっている企業しか勝てないので視点を変えるのです。他社がどう採用活動していることを把握した上で、他社に追随するのではなく、他社が弱く、自社が強みを発揮できることを見つけるのです。「大手ほど高い報酬は出せない。飲み会をはじめ会社の雰囲気がいいPRはどの会社でもやっているので、そこをメインにPRはしない。しかし、自社の〇〇〇をPRすることで、求職者のニーズをわしづかみできそう。なぜなら、他社はそこではないポイントを中心にPRする採用戦略だから」というように、コストをかけず、自社にピッタリの採用ができるようになります。

人材紹介会社はプロの集まりです。自社の提供したノウハウを逆手にとって恨むことはありません。それで採用が決まれば、自分の売上に繋がるので、「その採用戦略はいける!」となれば、喜んで協力してくれますし、いい関係性を築けるようになります。

人材紹介会社と上手く付き合うポイント

では、人材紹介会社の担当者とのミーティングで、自社が中途採用で成功するための「情報」をどのように聞き出し、活用すればいいか解説します。

【ポイント1 】複数の人材紹介会社を活用する

人材紹介会社は1社ではなく、特徴が違う複数社と付き合うようにしましょう。

ヘッドハンティングのように依頼時に着手金が発生する業態でなければ、通常は採用が決まらない限りコストはかかりません。特徴が違う複数の人材紹介会社を活用することで、それぞれの強みや特徴を相対比較で正しくつかむことができます。

「大手はベストマッチとは限らないが、数多くの求職者を紹介してくれるので、たくさん採用したいときや他から求職者のリストが出てこない場合は活用する価値あり」「紹介の数は少ないがベストマッチが多いので、少数精鋭の場合はここ」「ITエンジニアに特化しているのでエンジニア採用ならここ」というように、各社の特徴が分かれば、依頼先と内容のズレがなくなります。また、「求職者リストが届いた後、かなりゴリ推ししてくる」などのクセも分かります。今はネット上で、人材紹介会社の特徴が求人側・求職者側の視点からランキング形式で解説している記事も見かけます。1つの記事を鵜呑みにするのではなく、複数の記事で共通項をみることで、声をかけるべき人材紹介会社が分かります。当然ですが、営業担当者との相性もあります。相性がよく“当たり”の営業担当者と出会えたら、その会社が持つ人材データベース(DB)が自社に合わなくても、関係性はつなげておきましょう。営業担当の方が、同業内での転職・独立することも多いからです。担当者との相性は非常に大事なポイントです。

【ポイント2 】人材DBにない人材をアナロジーで発掘する

人材要件を人材紹介会社が持つ人材DBで検索しただけでは、候補が見つからない場合、「第51回:採用のセオリーをぶっ壊す②-IT / DX・経営人材などの専門人材の人材要件のスペックを具体的に設定する-(https://hr-souken.jp/article/42892/)」で解説したように、求める機能を満たす人材を、アナロジーで、転職マーケットにいる人材の中から発掘する方法があります。欲しい人材スペックの置き換えは、人材紹介会社の知見と担当者のスキルにかかっています。担当者の経験が浅ければ上司に同行してもらう等、運命共同体として一緒にアナロジーを行い、適材を発掘しましょう。この人材要件のスペック変更は、1社だけでなく、複数の人材紹介会社に声をかけ、どこまで対応ができるか力量を把握するうえでも有効です。

変更した人材要件を、他の人材紹介会社に依頼し、人材DBで検索してもらうと、採用候補となる求職者リストが充実します。

【ポイント3 】人材紹介会社は「業者扱い」ではなく「パートナー」として関係を深める

人材紹介会社とは「業者扱い」ではなく「パートナー」としてお互いwin-winの強い関係を結ぶことが重要です。もっというと、人材紹介会社の営業担当者とは人と人の深い信頼関係が最も大事です。なぜなら、人材紹介会社のサービスは感情を持つ人を介して行われるからです。誰もが採用したい掘り出し物の人材が出た場合に、最初に知らせてくれるかどうかは、信頼関係の強さに比例するからです。また、長い付き合いになれば、ツーカーで欲しい人材を紹介してくれる率も高くなります。情報源として接するだけでなら、相手にその意図は必ず伝わるので、相手は必ず割り切り、見切ります。

なので、人材紹介会社の担当者を勝たせる=自社の採用を成功させる視点で、同じ仲間として関わっていくことで、ドライでもウェットでもなく、いい距離感と信頼関係を築きあげていくという当たり前をちゃんと行うことが、最終的には全て上手くいくことに繋がります。

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